ボーイングB737MAX

June 4, 2015

Photo: PinsToPin


 ボーイングは評判の良いエアバスA320neoに対抗して売れ筋の小型機市場をおさえるべくB737MAXを開発した。後発だけに燃費ほかの性能面で先行したA320neoに優位性がある。


 業績の良いサウスウエスト航空に続けとANAも発注したが、その成果はどうだろうか。B737は7,800機も生産されたナローボデイ(客室に通路が1列の小型旅客機)だがさすがに旧式化してA320に対抗するために1997年当時最新鋭の777のテクノロジーを使って、近代的な第三世代B737NGに仕上げた。


 B737MAXの開発背景には因縁のエアバスA320(注1)発展型との競争があった。客席数100-200のナローボデイ機は国内線用の機体として米国はもとより、欧州、アジアと世界的に需要が多い。


(注1)A320

 お披露目の航空ショーのフライバイで滑走路の先の森に墜落した不運さにもめげず、世界で初めてのフライバイワイアーを採用したA320は欧州エアラインが採用するだけでなく、米国やアジアでもじわじわボーイング市場を切り崩した。


 2010年に発表されたA320neoは低燃費エンジンに換装した発展型で、低燃費性からボーイングの独占だったアメリカン航空からA320とneoをそれぞれ130機という大量発注を受け、ANAなどこれまでノーイングの牙城と思われていたエアラインにエアバス導入のきっかけをつくった。


 ボーイングはこれを黙って見逃せば稼ぎ頭の小型機市場を失うことにもなりかねない。危機感を持って開発したのが737MAXである。新型機開発を見送った理由は増大する新型機開発のコストの他に、複雑化による不具合と生産の遅れ、形式証明の取得に長時間を要すること、エアライン側の新機種の訓練がエアラインの負担となり嫌われることを考慮すると、定番の737のアップグレードがもっとも早くA320neoを追い越して市場を取り戻せると考えたのだろう。


 B737の大きな特徴はエンジンナセルが円形でなく下方が広がった形で主翼から前方にシフトしていることと、主脚が大型タイアで引き込まれた後、カバーがないこと、独特なウイングレット(一部の機体)にある。737MAXはアメリカン航空を含む9社からすでに2,000機以上発注を受けているので、このままいけば間違いなく先輩格の737NGを引き継いでボーイング社の看板機種になると思われる。


 A320neoとの燃費の優位性は4%に過ぎないが頻度の多い国内線ではこの差が大きな差となる。エアバス、ボーイングともにヒット機種がでるとエンジンを低燃費の大口径ファンのエンジンに換装し低燃費化と新型機開発のリスクがないこと、納期に遅れがでないことを宣伝文句にして売り込むスタイルが定着した。911以降の米国では国内線乗客数が落ち込み高速列車による都市間公共交通システムの検討も始まったが、国内線の小型機でエアラインが支えられている状況は変わっていない。


 


Photo: aspire aviation


 737MAXのLCCからの受注が増えている。上の資料のように燃費の優位性は確かにある。LCCにとっては生命線であることも納得できる。しかし顧客の立場からすれば安い運賃より安全で快適な空の旅である。ナローボデイ機の特徴である3+3シートアレンジメントに、できれば快適性の向上を求めたいのが実情だろう。その点で客室湿度、気圧、温度制御は確実に向上してはいるが、それ以外はLED照明や電子式カーテンなどにすぎない。LCCの次に来るもの、それを見抜いて根本的に新型機を開発することを航空機メーカーに望む。787の狭いトイレはうんざりである。