米国・NATOとロシアが大規模軍事演習

May 28, 2015


Photo: The Finnish Defense Forces


 今年もヨーロッパを中心に米国とNATOの数々の合同軍事演習が行われている。現在実施されている欧州と米国のかつてない大規模な合同軍事演習に対抗して、ロシアもシベリアで軍事演習を行っている。

 

 写真(手前)はフインランド空軍のマルチロール戦闘機(注1)、F/A-18 Hornet 。フインランド空軍は16機のF/A-18 Hornet が参加する。後方のカナード機はサーブ39グリペンにみえるがフインランド空軍には配備されていないはずなので、スエーデン空軍のものと思われる。異なる機種間の連携をとることもこの作戦の重要な目的である。最近では味方同士でデータを共有することが重要である。

 

(注1)制空に専念する制空戦闘機に対して近年は対地攻撃能力を備えたマルチロール戦闘機の必要性が高まった。欧州ではEurofighterTyphoon、米国はF/A-18 Hornet が主力。Fは戦闘機、Aは対地攻撃機の略称なのでF/A-18 Hornet は名称が性格を表している。アメリカ海軍、海兵隊、オーストラリア、カナダ、フインランド、クエート、マレーシア、スイス、スペインが配備。欧州ではフインランドは異色の配備。生産数は1,480機。湾岸戦争以来、実戦で頻繁に使用されてきた。


 

米国とNATO諸国

 「アークテック・チャレンジ・エクササイズ2015」と題した合同軍事演習は米国と英国、オランダ、ドイツ、ノルウェー、デンマーク、フランス、アイスランドのNATO加盟国と同盟国のフィンランド、スイスとスェーデンが参加している。スウェーデン、フィンランド、ノルウェーの各国の軍事基地が軍事拠点となり、北方の空域で25日から6月5日までの12日間行われる。その間、米国とNATO諸国の戦闘機115機と4,000名の兵士が参加するこれまでにない大規模な航空機合同演習である。


 このような合同軍事演習は2013年にも実施されたが、今回は規模と参加国が多いことから注目される。その牽制に動いたのがロシアである。

 


ロシア

 ロシアは米・NATOの演習空域のすぐ東側の北極海で4日間の戦闘機250機、航空母艦を含む艦船10隻と12,000人の兵士による軍事演習を同じ日に開始している。9月に予定されている大規模演習の準備の一環として行ったと報道しているが、NATOと同じ日に緊急で開始したのは明らかに対抗するためである。

 


Source: MailOnline 

 


露中海軍合同演習

 ロシアと中国の両海軍は地中海で「海上連合2015」を11〜21日の期間行なった。ロシアはミサイル艦Moskvaと揚陸艦など6隻、中国はミサイル・フリゲート艦を含む3隻の計9隻が参加した。黒海に面しているロシアに併合されたクリミア半島の南西に位置するセヴァストポリ(現在ロシアの黒海艦隊の基地)が合同海軍拠点となった。


 3月にNATOが黒海のクリミア半島に近い海域で海軍演習を行った。ロシアにとって今回の演習は黒海での海軍の駐在を示す機会でありNATOを牽制する狙いがあった。中国にとってはアデン港からジブチを経由して黒海でロシア艦隊と合流することで中東からヨーロッパでの作戦能力を高めることができた。



米国・NATO海軍合同演習

 現在「バルトップス15」に参加する米国とNATOの航空空母、揚陸艦、潜水艦など計50隻がロシア国境から約80キロのポーランドのクダニスク港に集結している。NATOからはリトアニア、エストニア、ラトビア、ポーランド、オランダ、ドイツ、英国が参加、バルト海沿岸で海軍演習を6月5日から2週間にわたって行う予定である。


 バルトップス演習は1980年代から行われてきたが、今年はウクライナ情勢を背景にバルト諸国が直面しているロシアの脅威から、その規模が注目される。



 英国はHMSオーシャンヘリ空母を派遣、米国の上陸部隊も活用される予定である。作戦の1つは、アパッチヘリによる攻撃の中、オーシャン空母からクダニスクに上陸する訓練である。バルト諸国のロシア侵略の脅威に対応する軍事演習と思われる。