リンツ・ショコラ・カフェ襲撃の意図

Dec. 15, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 オーストラリアのシドニーにあるマーティン・プレースはシドニーの金融中心地でそこにあるリンツ・ショコラ・カフェに、突然黒地に白いアラビア語の文字が書かれた旗が窓に掲げられ、警官が周りを取り囲んだ。報道によると店内には数10人の人質とともに、銃を持った男が少なくとも2人いるとみられる。銃声のような大きな音が聞こえたという目撃証言もあるが、何故か警察は事件に関するコメントを避けている。


 リンツ・ショコラ・カフェでは、そのリンツのチョコレートを使用したチョコレート菓子やドリンクを提供する。製品では味わえないショコラティエが腕によりをかけて作り出した様々なチョコレートやスイーツを楽しめるのだが、何故リンツ・ショコラ・カフェが狙われたのだろう。

 


 リンツ・ショコラ・カフェに周辺の銀行街から一息入れに来る人質の「価値」が高いところに目を付けたテロリスト達の要求は何か。今回の事件には謎の部分が多い。まず犯行に際しては過去のテロリスト事件と大きく異なる点は爆弾攻撃や銃撃戦などが激しく行われた形跡がなく、死傷者もでていないことと、政府当局もテロリストと決めつけていないことである。またアラビア語の旗もISISと直接関係はないとみられる。金融、ビジネス中心に人質をとって立てこもる目的は何か。

 

 16時間後に警察が現場に突入した。銃撃戦になり人質はあわせて17人おり、38歳の女性と34歳の男性が死亡したほか、4人が負傷、現場に突入した警察官1人も負傷し、立てこもり犯は男1人で警察との銃撃戦で死亡した。犯人はイスラム国のシンパサイザーでイランからの難民であった。

 

 

移民による経済成長のリスク

 マーティン・プレースにはニューサウスウエールズ州首相の事務所や豪中央銀行があるビジネス街の中心でシドニーの中心なのである。テロリストとISISの関係は確認されていないが、毎年約25万人に上る移民の受け入れが経済成長要因の一つであり、最も人口の多いニューサウスウェールズ州は、拡大する需要を満たすため、向こう4年間で600億豪ドルを移民のインフラ整備に投資する。1年間に「技術ビザ」で入国した技術移民(注)は約12万9000人に上り、向こう1年間でも同程度の技術移民が迎えられる見通し。技術移民は、中国、インド、英国、ニュージーランドが多いが、イスラム圏から過激な活動家が含まれていてもおかしくない。

 

(注)高学歴で高いスキルを持つ移民を受け入れる政策を「選択的移民政策」という。利益をもたらす高度人材の優先的受入れとそれ以外の外国人の流入阻止を目指すが、家族の呼び込みが容認される限り、後者を阻止するのは難しい。経済成長と諸刃の刃となるリスクが大きい。