スマート兵器とIT技術

Jan. 25, 2015




 

 トマホークは代表的な巡航ミサイルで地形を判別して設定された目標に向かって超低空飛行で突っ込む誘導ミサイルである。一方、誘導爆弾は推進力を持たず、方向の制御で自由落下を目標まで誘導する点で、巡航ミサイルと一線を画する。


 推進力を持たないので当然、コストは圧倒的に低く攻撃機や爆撃機に大量に装填して頻繁に地上攻撃に使用される。誘導爆弾のアイデアそのものは意外に古く日本を含む各国で開発を行なっていた。本格的な使用はナチスドイツが対戦車、対艦用に開発した無線誘導方式のものである。


 無線誘導でも目視では制御に限界があった。日本の開発した赤外線追尾型の誘導爆弾は現代のTV、赤外線、レーザーによる誘導爆弾の先駆者ともいえる。これらのハイテクを駆使した誘導爆弾で特筆すべきものは、米軍のPaveway(上の写真)、JDAMとWalleye(注)である。


 

Paveway

 Pavewayはレーザーを目標に照射しそれを検出して自動追尾するシステムで武器メーカーレイセオン社が製造したが、開発はIT技術にたけてテキサスインスツルメンツ社が行なった。シーカーと呼ばれるレーザー光検出部には誘導計算機が直結され制御ソフトを介して、爆弾の側面4方向に取り付けられた4枚の操向用カナード翼で操縦された。爆弾後部には安定用の4枚固定翼を持つ。


湾岸戦争で使用され成果を上げたが、同時にレーザー照射を必要とすることで天候に左右され制御中に狙われ易いため、後にGPSとレーザー制御を併用した。Pavewayは最も安価な誘導爆弾であったが、赤外線自動追尾方式は戦時中に日本軍が開発していたことは興味深い。



 

JDAM

 JDAM(上)は通常爆弾のアップグレードで、慣性誘導とGPS誘導の制御装置と尾翼制御を追加することで、遠隔精密誘導機能を爆弾に追加する装備である。攻撃機から投下されたJDAMは与えられた目標座標へ向けて尾翼を操舵して接近する。Pavewayでは常にレーザー照準を行なう必要があるが、JDAMは投下後に離脱できる点で有利とされる。

 

(注)Walleye

 Walleye(下の写真)は湾岸戦争で動画が数多く公開されたTV誘導の(空対地)滑空誘導爆弾である。Walleyeの先端には固体素子TVカメラが装備されていて、発射後には離脱してTV画面を見ながら目標を選択して誘導する。興味深い技術としては当時出現した固体撮像素子で撮影した画像の中で動く標的をロックして、それを追尾するようなフイードバック回路の発案であった。動き回る対象にロックしてそれを追尾する技術は一般化すれば、センサー入力から出力情報を計算してフイードバックすることで、対象と自分を一定の幾何学的関係に保つ動作制御となる。

 

 


 上の写真はWalleye。先端にTVカメラを備える。


















 

IT技術の使い道

 これは後に市販されたSegwayの直立維持や、ピンポンロボットで球を追いかける制御、人口4足ロボット等の応用につながるIT技術であった。Walleyeの制御技術を開発したのは民間のIT技術者であった。米国のIT技術、AI技術は民間発が宇宙開発、軍事技術で実用化された後に、民間にもどるというサイクルが強みである。アイロボットや癌治療のサイバーナイフ技術がそれである。優秀な技術者集団を抱えながら、方向性を与えられないSONYのCEOも学ぶべきことが多いようだ。宇宙や軍事以外にもやれる事は多いはずだ。