移民政策を巡る2極化が激化したスェーデン

13.11.2015

Photo: BBC news


 欧州で1970年代から最も積極的に移民を受け入れてきたスェーデンでは、移民政策を反対してきた野党のスェーデン民主党が、今では最も支持率の高い政党となり、その支持は拡大している。スェーデン社会のなかで、移民政策を巡り、2極化を反映している。移民増加により社会困難、犯罪の増加、経済状況の悪化が進んでいるなか、スェーデン民主党青年たちが移民に配布している、スェーデンの現状を説明するビラが話題となっている。


 トルコ沿岸に位置するギリシャ領のレスポス島で、トルコから渡ってくる移民に渡されているビラには以下のような事が書かれている。


 お金はない、仕事はない、住居はない


 我々の国とスェーデン人についてポシティブなことを聞いているかと思われる。確かに国民は友好的で、勤勉で、援助は豊富かもしれないが、社会は破壊している。


 我々の富はなくなった。国民に教育や基本的な医療を与えるのに今では国はお金を借りている。長年に渡り、大量の移民を受け入れたことから、以前安全であった国は安全ではなくなった。


 銃撃事件やギャング関連の犯罪は非常に高いだけでなく、最早公共広場で手榴弾事件が起きても驚かない。スェーデンは今では、性的犯罪であるレイプが世界で2番目に高い国となった。


 スェーデンは一時的に戦争やテロから逃れ人たちの救済を行っているが、今現在テントやキャンプ用ベッドしか提供できない。いずれ、あなたたちは送還されることになる。


 スェーデンは近代的な西洋社会である。男女平等である。強制的な結婚や複婚を受け入れることは絶対ない。シャリーア法に従ってハラル方の動物屠殺や公共の場でブルカを着るのは我々の国は禁じるであろう。



Photo: BBC news

 

 移民対策で財政は悪化、財政危機を迎えている。欧州投資銀行から融資を受けることになっているが、社会保証の58%以上が移民向けで、1日1000人のペースで移民が入ってくる現状に対処することは不可能に近い。難民の多くはスェーデン語ができないことから、直ぐに職につくことも不可能である。住宅事情も深刻な社会問題である。スェーデンの公共住宅協会によると、住宅状況は深刻で、住宅難436,000件にのぼると報告している。移民を収容する難民キャンプをスェーデン中の公園に設置する提案も議会ででているほど、難民を受け入れるが、住居はない問題に直面している。上の写真はストックホルムにあふれる難民たち。

 

 

 政治家たちが進めてきた多文化共生政策により、スェーデンは2極化している。移民の増加は去年から漸進的ではなく、急激に国の対処能力を超える数で増えている。国と国民の限界を試しているように思われる。スエーデンの移民問題は過去の記事で取り上げているが、状況はより悪化し年間で100万人規模ともなれば、過去最大の規模となり、欧州にとって2015年は試練の年であることは間違いない。