なぜパリでテロが起きたのか(その2)

17.11.2015

Photo: TMZ


 ベルギーのJan Jambon内務大臣は16日に、犯行メンバー間でプレイステーション4(PS4)が通信手段として使われたことを発表した。「PS4は対傍受性能がWhatsApp(注1)より難しい」と述べている。テロの首謀者と思われるベルギー国籍の人物のブリュッセル自宅捜査で少なくとも1台のPS4が押収されたことから発覚した。SONYもいち早くこの問題に反応した


(注1WhatsApp2009年から配信が開始されたiOSandroid共有のスマホアプリソフトで、インターネットでリアルタイム通信ができる。セキュリテイの脆弱性はたびたび指摘されているが、全世界に多くのユーザーがいる。

 


 インターネット・セキュリティの専門家のWill Geddes氏は、ISISはメッセージが暗号化されたアプリKik, Surespot, Wickr, Telegramを使っているうえ、独自の暗号化ソフトウェアを使い、NSAや情報機関が傍受できないよう、「burn time 」(最初にアクセスした人が見た後、指定した秒数でメッセージが自動的に消滅されるアプリ)を使っていると指摘する。


   NSAや情報機関がメッセージを傍受するには、アプリ提供会社からの許可が必要となるが、多くは利用者に情報の提供要請があることを通知しなければならないため、傍受することは困難である。英国はパリ同時多発テロ事件後、このようなアプリを使っての通信データをインターネット通信に対するアクセス権を要求しなくてもMI5, MI6, GCHQ(政府通信本部)が傍受できるよう法案成立に動き始めた。

 


 2013年にワシントン・ポスト紙は、YahooyahoomailMicrosofthot-mail Googlegmail FacebookSkype PalTalkYouTubeiphoneAppleTwitterなどは米NSA(国家安全保護局)と英国GCHQ(政府通信本部)の監視下にあると報道した。全ての通信データを傍受していると指摘。このことは、エドワード・スノーデン氏によっても明らかになっている。プレイステーション・ネットワーク経由の通信手段がテロリストに使われる懸念もスノーデンは指摘している。下の写真はGCHQ本部。


 

Photo: Mail online

 

 その反面、イスラム過激組織によるホームページ、リクルート用ビデオ、人質処刑ビデオがインターネットで露出している。なぜこれ程も露出が許されているのかが疑問である。画像や音声の質がよく、テロリストの主張、メッセージが消滅されることはないこれらの動画はイスラム過激組織の支持者が拡大している要因の一つでもある。パリ同時多発テロ事件によって、全ての通信手段が監視下体制に置かれる可能性があるなか、イスラム過激組織によるインターネット上の情報プロパガンダはいつまでもそのままである。

 

 パリ同時多発テロ事件で、国民にとって全ての通信手段が監視下体制に置かれる可能性がある。世界に拡散したテロリストをたたくには通信手段を断つことが最も効果的であるが、通信傍受や情報発信場所の特定が無制限に行われる危険性をはらんでいる

 

 国際ハッカー集団「アノニマス」は先ほど、 YouTubeでパリ同時テロ事件の報復にイスラム過激組織にサイバー攻撃を仕掛けると予告した。「我々の価値と自由を守るため、テロリストグループのメンバーを追い詰める」と述べている。国は国民を監視体制に置くだけでテロリストを検挙できず、手をこまねくばかりで、一時は目の敵にしていたハッカー集団がテロ集団の対応に当たることとなった。