IoTで20年後までに全てのモノにチップ

31.12.2015

Photo: dlm.skmm.gov.my

 

これまでも物流においてはRFタグがなくてはならない存在である。IoTInternet of Things)によって、あらゆるモノがネットに繋がれる時代を迎えようとしている。科学機器の世界でも先進的な機器はIPアドレスを持ちネットに繋がれることによって、遠隔地でのモニターや操作が可能になるとともに情報交換でマルチユーザーが操作することは新しくない。例えば大型の電子顕微鏡を地球の裏側から操作したり、遠く離れた病院の医者が外科手術ロボットを操作するなどである。IoTにピンと来ない人でも遠隔地のライブカメラを操作したり、外出先からペットの様子をモニターしたり、身近な様々なシーンでこの技術が浸透し始めていることに気づく。

 

 

Industry4.0

いち早くドイツはIndustry4.0という概念を提案し工場の製造ラインの機器を全てネットにつないで効率化をはかる国策をたてた。トヨタのカンバン方式に習い全ての機器をネットにつなぐことにより、必要な部材が製造現場に運ばれ製造ラインの全ての機器のモニターが行えて工場全体の管理運営の効率を上げることができる。

 

IoTの将来性に目をつけたベンチャーキャピタルのMarc AndreessenIoT2.02500万ドル(日本円にして約30億円)の投資を決定した。IoTへ期待と将来性はこの5年で膨らみ続け2015年に技術アナリストGartnerHype Cycle for Emerging Technologiesレポートに取り上げ、特にスマート家電分野の将来性に注目した。

 

 

投資家が注目するIoT

AndreessenによればIoT時代は始まったばかりで、10年以内にこの分野が発展を遂げれば携帯電話も消え去るほどのインパクトがあるという。携帯やスマホの液晶画面のような制約された情報表示に変わり、将来は家の壁やテーブルなどが情報を表示し入力が可能になる。まるでSF映画のように朝起きたら壁に近づいたりテーブルに向かうだけで情報がみられ入力することができる究極的なユビキタス社会になる、というのだ。

 

 

Source: Quality Insider

 

 

続々あらわれるStartup 

投資先はカリフォルニアのSamsaraという工業用のIoTソルーションを提供するベンチャー企業である。資金を元にSamsaraが現在のIoTの進化形であるIoT2.0とともに3年後に再起業する。2020年までにIoT分野ビジネスは倍増し、市場規模が7.67兆ドルから14兆ドル(日本円で約920兆円から1680兆円)という規模になるとしている。

 

IoTの開発を行うのはマイクロソフトやテキサスインスツルメンツといったITの巨大起業ではない。同じくカリフォルニアのHeliumは別のベンチャーキャピタルから160万ドル(日本円にして19千万円)、Ayla Networks IoT Cloud Platform250万ドル(日本円にして3億円)の出資を受けた。IoTベンチャーへの投資額は74億ドル(日本年にして約8.9兆円)にのぼる。

 

 

薬品製造や乳製品製造など精密な温度管理を必要としている分野から都市の水道やエネルギー供給の管理会社などIoTの応用範囲は多岐にわたる。これらの分野では膨大な数のセンサーを低コストで機器に仕込みクラウドにつなぐ必要がある。

 

こうしたIoTIT企業例えばIBMから供給することもできるが、ソルーションの価格が500万ドル(日本円で約6億円)ともなり、経済性が悪い。そこでベンチャーに投資してソフトを開発させ低価格センサーと組み合わせれば低コスト化がはかれる。Andereessen2020年までに家庭の照明機器やドアノブにいたる全てのモノにセンサーが組み込まれネットにつながれるとみている。ドイツのIndustry4.0による英国の経済効果は5.310兆ドル(日本円にして約637兆円)といわれる。

 

 

自動運転車(Autonomous car)の開発が進んでいるがメルセデス・ベンツ車のF 015というコンセプトモデルの動画をみるとIoTの使われ方がよくわかる。車とスマートフォンの情報交換、ドアの内側の大型表示パネルを用いて車の各種セットアップやナビゲーション、さらに車自身が道路に状態を表示したり後続車に減速を知らせる、といった情報入出力機能を備える。ナビゲーションの入力にモーションセンサーや眼球の動きをとりいれるなど数多い。現実に最新のBMW7シリーズにはモーション入力機能がついていて、ラジオの選曲やボリューム操作など手を動かすだけで8種類の制御が可能になっている。

 

 

 

新しいIT企業が担うIoT

PCの不振に代表されるIT不況は一時的なもので、やがてIoTによって再び情報化の波が押し寄せる。残念なことにPCメーカーや携帯・スマホメーカーなど巨大化したIT企業にはそれに答えることはできないであろう。

 

肥大化した企業はそのままでは機敏な適応力と柔軟な頭を持たなければIoTの時代にメインプレイヤーにはなれない。恐竜は巨大化した結果、環境変化適応できなくなり絶滅したが、その一部は始祖鳥として生き残ったように行き方、考え方を「転換」する柔軟さを持つ必要がある。経営悪化でリストラにより優秀な技術者の頭脳を簡単に手放す企業は言語道断である。投資家はそれを見越してベンチャーに期待し資金をつぎ込むのである。