中国の株価暴落と実体経済

July 29, 2015

Photo: FRANCE 24


 

上海株式市場

 上海株式市場が27日に急落、市場の値動きを表す上海総合指数は 8.48%と85カ月ぶりの大幅な下落をみせた。引き続き28日も3%から5%の範囲内で下落が広がったが、政府の株価暴落防止策を継続するとの発表や政府系金融機関の買い支えにより一時プラスに上昇、その後再び下落、-1.68%で終えた。


 中国政府は8,000億ドル2014年の中国GDP10%に匹敵する額の株価暴落防止策をとったが、27日の暴落はその効果が一時的なものに過ぎないことを示した。中国政府が市場を操作する一方、経済ファンダメンタルズを無視した株価押し上げが果たして持続可能であるかは疑問である。



中国の実態経済

1. 中国工業部門企業利益

 工業部門企業利益は4月の前年同月比2.6%増と5月の0.6%増から一変して6月は0.3%減とマイナスに転じた。今年、中国政府による3度の金利の利下げで企業の資金調達コストが6.2%低下したにも関わらず、企業利益は低下した。


 その背景には生産者物価指数 (Producer Price Index: PPI) の低下がある。6 月にはPPIは前年同月比で4.8%低下、39カ月連続のマイナスとなった。製造業におけるデフレが深刻化しており、価格の下落が企業利益の低迷となっていることが分かる。


 16月期でみると、工業部門企業利益は前年同期比で0.7%減少したことになる。企業利益の低迷傾向は起業家の将来に対する信頼度、企業の設備投資など経済全体に与える影響は大きい。



Source: National Bureau of Statistics

 


2. Caixin中国製造業PMI (購買担当者景気指数)

 景気転換の先行指標であるCaixin中国製造業PMIの7月速報値は前月から悪化、市場予想を下回る48.2であった。新規受注、生産高、価格が大幅に悪化していることから、経済が減速していることが読み取れる。

 

 景気後退を示す分岐点である50を下回ったのは5カ月連続であり、景気動向が景気後退に向かっていることを示唆している。製造活動のバラメーターとも言われるPMIの悪化は、国内における製品需要状況の低迷と国際競争力の低下や中国製品需要の低下による輸出の減少を反映している。

 

 

3. 中国電力消費

 世界の工場と言われてきた中国。2014年に2,300万台の乗用車、トラック、バス、ソーラーパネル、スマートフォン、衣類、などを含むあらゆる製品を世界市場向けに製造してきた。全て製造過程で電力が必要となる。加えて、中国における新幹線や地下鉄の拡張、高層ビルや住宅の建設、電気を要する家電製品の普及などによる電力消費は拡大傾向にあった。

 

 だが、2015年の1-6期の電力消費は前年同期比でこれまで30年間で最も低い1.3%の増加に止まった。最も下げ率が高かったのは重工業産業に続き製造業であった。電力消費率は中国経済の成長のバラメーターでもあるため、中国経済は低成長段階に入った事を表している。

 

 

4. 中国から欧州、米国向けコンテナ便輸送料金の急落

 中国から欧米への輸出量の減少により、コンテナ便輸送料金が急落している。 上海から世界15主要都市への輸送運賃のスポットレートの動向を示す上海輸出コンテナ運賃指数 (SCFI)と共に中国の主要な港から世界の主要な港への契約上のレートとスポットレートの動向を示す中国輸出コンテナ運賃指数 (CCFI)は大幅に下落している。

 

 SCFI(下の図)は基準年(2009年を1000とする)から44%も下落、CCFI (1998年を1,000とする)17.4%も下がっている。急落の原因は中国製品需要 (輸出)の減少である。つまり、経済の原動力となっていた製造業の低迷を示唆している。

 

 

Source: Drewry Maritime Research