エボラ出血熱が拡大した責任は何処にあるのか

Aug. 14, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Update: 感染者 1,848人 死者 1,013人(WHO 8月12日発表)

 現時点で、エボラ出血熱の感染と疑いの症状が確認された国は、アフリカではリベリア、シエラレオネ、ギニア、ナイジェリア、ペナン、ルワンダ、ガーナ、ベニンの8カ国にまで拡大し、さらにカナダ、サウジアラビア、フランスが加わった。これまでのエボラ感染と今回が違うのは、医療関係者の感染が170人、うち80人が死亡した深刻な状況であること。感染は前例のない規模に拡大、WHOは「国祭的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宜言、感染に歯止めがかかる兆しは見えない.

 
 米紙ニューヨーク・タイムズは10日、西アフリカで拡大しているエボラ出血熱の最初の感染者がギニアで昨年12月6日に死亡した2歳の男児であると報じた。この情報源となるのが、研究チームが2014年4月16に米医療専門誌ザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで発表した論文とみられる。

 論文は、Emergence of Zaire Ebola Virus Disease in Guinea (ギニアにおけるザイール・エボラの出現)と題し、国境なき医師団のヨーロッパ支部の医療チームが3月18日に今回のエボラ発生地、ギニア南東部のゲケドゥに行き、調査した結果の報告である。

 

 疫学的調査の結果、最初の感染者は、体調を崩して数日後の2013年12月6日に死亡した2歳の男児である。男児が住んでいた場所は、シエラレオネとリビリアの国境に近い、ギニア南東部のゲケドゥ地域であったため、感染がこの3カ国に拡大したとみられる。男児の死亡から1週間後、母親と妹(3歳)、祖母が相次いで死亡した。いずれも発熱、嘔吐、下痢の症状を訴えたが、病名は分からず、出血が見られなかったため、エボラの疑いが低いとされ、エボラ出血熱の検査を受けなかった。

 別の地区から祖母の葬式に参加した2名が感染、そこから2名の家族や親戚に感染が広がっていった。3月にエボラと確認、3月29日(エボラ発生から13週間目)までにギニアの8地区にまで広がり、111人が感染, うち79人が死亡(死亡率71%)した。その間、治療にあたった医師、看護師、医療関係者の3人も死亡している。今回の感染は「ザイール株」のエボラ・ウイルスと確定、宿主はフルーツ・コウモリと疑われる。

 3月31日には、国境なき医師団は「前例のない」広範囲に拡大したことで、対応が困難な状況、各国の支援が必要と発表した。では、この段階でさらなる拡大を封じ込めることはできなかったのであろうか。
 
 今日の「もはや制御不能」な状態にまで拡大していった要因には以下が大きく影響したのではないかと推測する。

⑴ 西アフリカは世界最貧困地域の1つであることから、十分な衛生的な医療設備、エボラ対応に必要な完全防御装備や医療器具がない。

⑵ 4月から6月の間、感染者数が減少傾向にあったため、感染の封じ込めに成功したかと思われ、対応にあたる医療徒事者が減らされた。しかし、7月から再び急激に感染が拡大、対応に遅れをとった。リビリアでは1週間で、感染者170人と死亡者90人の増加をみせた。感染力が急激に強まったのである。

⑶ 一般市民へのエボラ・ウイルスに関して情報提供と警告の遅れ。

⑷ 感染者や感染地域の隔離が遅れたこと。それは、国家非常事態を発令、軍を利用しての地域や国境の封鎖および人間の移動を禁じ、物流の移動の制限が遅れたことによる。

⑸ 感染から発病までの潜伏期間が2−21日までと長いこと。

⑹ 感染者が接触した人達のリスト作成と追跡調査が混乱であること。


⑺ 症状に関しての不十分な知識とそれによる誤診。たとえば、初期の段階では出血がないこともあり、最終段階では発熱の症状がないこともある。そのため、病院でもエボラと疑われず、感染を広げたケースが多く報告された。

⑻ 病院に行かず(経済的理由と西洋医学への抵抗)、家族による看病が多いことによる家族感染。地域によっては、病気は神による罰と見なす文化があり、知られることを恐れ、秘密に家族が看病する場合がある。そうなると、正確な感染者数を把握することが混乱となる。

⑼ 遺体を洗い、葬式ではお別れとして触る風習があること。(エボラの感染方法は感染者の排泄物, 汗を含む体液に触れることによる)

⑽ 医師や医療徒事者の不足と治療に当たる過酷な環境。(エボラを扱う精神的ストレスと完全防御服を着ての作業による体力の消耗)

⑾ 医師と医療徒事者の感染と死亡が高いこと。病院の閉鎖に繋がるケースや医療徒事者の職場放棄が起きている。

 

 

Ebola Guide how to avoid catching it