閉鎖されていた北米司令部再起動の意味

Apr. 10, 2015

 War GameなどのSF映画でたびたび登場する北米防空司令部(NORAD、North American Aerospace Defense Command)はコロラド州Cheyenne山の中腹をくりぬいてつくられた核戦争に耐えうる巨大なバンカーであった。1960年代の冷戦の遺産であるこの要塞は10年前に閉鎖された。


 3階建てビルに相当する15の空間は30メガトン級の核攻撃に耐えるだけでなく1,000個の免震バネで地震にも耐えるバンカーとして知られる。扉は25トンにもなる対爆発仕様でそれ以外は花崗岩で守られている。


 1960年代からカナダとアメリカが協力してNORADを運営して来たが、2006年にロシアと中国から核攻撃を受けるリスクは低いとして、待機状態に入っていた。冷戦時には最大で1,1000人が勤務して発電システムや水、食糧もいざというときには自給できる態勢をとっていた。



 2006年にNORADはCheyenne山からコロラドスプリングスの空軍基地に移動したが、バンカーはいつでも稼働できるように保持していた。状況が変わったのは2001年の911である。国防総省はこれを契機にCheyenne山の装備を近代化したが、最近になってレイセオン社にさらなる機能向上の契約を行ない、再びバンカーを司令所として再起動することになった。



 

 最大の理由は近代兵器がネットワークや電子機器に依存度が高くEMP攻撃で機能が失われる恐れがでたためと説明されている。核戦争に代わりEMP攻撃のリスクが高まったということなのだろうか。確かに核戦争は諸刃の刃であり先制攻撃をしても報復攻撃で両方の国とそれ以外の国も致命的な打撃を受ける。地球人類の破滅の恐怖が抑止機能として働いたのである。

 

 

 しかしEMP攻撃は一時的に戦闘能力や社会生活をマヒさせるだけであるので、戦闘能力を奪い陸上部隊が制圧すれば敵国を無傷なまま手中に収めることができる。EMPを防ぐには金属の箱で囲むしかないので、そうした対策をすれば完全にEMP防衛機能を持った司令所が出来上がる。レイセオン社との契約は10年に渡る。核戦争のリスクは低くなったがEMP攻撃のリスクが高くなった、ということなのだろう。