火星探査でアメリカに挑戦する欧州とロシア

Apr. 15, 2015

 火星移住が現実的な課題となっていることは、裏を返せば地球に長期間の宇宙旅行を上回るリスクが高くなって来たことを意味するのだろうか。


 映画「インターステラー」では食糧危機に陥り人類絶滅の危機にある地球から生き残りを掛けて惑星間移住に挑戦する人々が描かれている。時空の旅にはワームホールなどのトリックが無い限り、気の遠くなるような長さで一時的な生命活動を低く抑えなければ目的の惑星に着いた時には老人になっているだろう。だから現実的でない、と考えるならば間違いだ。自分たちから近いところに住めなくもない惑星をみつけて、緊急避難的に使うことも考えておいた方がよい。


 アメリカはNASAが火星の探査と移住の調査のためのプロジェクトORIONをスタートしている。計画の最新情報はORIONツイッターページを参照していただくことにして、ここではその対抗馬である欧州のExoMarsについてかくことにする。

 


ExoMarsとは

 欧州がアメリカに対抗して成功したのはエアバス社が代表的であるが、Exo Mars(Exobiology on Mars)は欧州連合がもともとは独自に進めて来た火星探査計画であるが、現在は財政難からロシア連邦宇宙局と共同で進めている。


 ロシアのプロトンMロケットによる最初の打ち上げは2016年が予定されており、火星の地表を動いて調査を行なうローバーの打ち上げは2018年となる。しかし計画遂行に後から加わったアメリカが離脱し、現在はロシアとパートナーを組んでいる。それでも欧州の財政難から開発資金の調達に暗雲が立ちこめている。




欧州とロシアのパートナーシップ

 ExoMarsのミッションは火星の生命の痕跡を調査と火星表面環境の調査である。これらはいずれも水の存在が確実となり火星移住が現実味を帯びた今日、有人探査や居住のための準備に必要不可欠である。欧州とロシアは共同でこのミッションを行なうことで、両者が情報を共有する道が開けた。

 

 これまで多くの宇宙ミッションがアメリカの一極集中で行なわれ、優位性は絶対的なものだったが欧州とロシアが手を組んで、火星の調査は独占が崩れた。さらに火星探査を狙う国はこれらの他にもある。インドが火星探査を行なう計画を立ち上げている。

 

 

 最初のミッション

 2016年に予定されているのはTGO(Trace Gas Orbitor)と呼ばれる火星大気の微量分析を行なうミッションで、スキアパレッリと呼ぶEDM(Entry, Dscent, and Landinh Demonstrator Module)を火星表面に着陸させる。着陸後は大気や地磁気の定点観測が行われる。

 

 

 ローバーミッション

 2018年に予定されるのはロシア側の着陸機で火星地表に運ばれるExoMarsミッションである。注目されるのはエネルギー源としてロシアが開発する小型原子炉を使うアイデアである。なおTGOで火星表面のメタンマップを作成しておき実際にExoMarsで探査することになっっている。メタンガスの分布の詳細がわかれば生命の起源がメタンとする説にとって極めて有力な証拠が得られるだろう。このミッションではロシアが着陸までの重要な機器の製作を担当する。

 

 

 火星探査計画は生命の起源を解明するという壮大な基礎科学での貢献の他、現実的な惑星移住の先鋭となる可能性も秘めている。一方でロシアにとってはアメリカに差をつけられていた火星探査計画に関する技術(例えば惑星探査で重要になる希薄な大気突入と着陸の技術)を、コストをかけずに習得できるチャンスでもある。ウクライナ問題で欧州との関係が悪化したが、欧州へのエネルギー供給を通してロシアとの関係は無視できないものがある。今回の共同で火星探査に関する科学技術でもアメリカの一極集中が揺らいだ。