Promised Landのフラッキングで地震が多発

Apr. 10, 2015


 映画"Promised Land"はすでに紹介したように、マットデイモン主演のシェールオイル掘削がもたらす環境破壊を警告した映画である。最近の状況をみてみると懸念は現実となっていることが明らかになった。


 映画では環境団体を装ってメジャーが市民運動をわざと起こし掘削賛成派と偽環境団体との対立構造をつくりだすことによって、市民を取り込もうとする。しかし環境汚染はフラッキング(水圧破砕)による影響が深刻である事は最初からわかっていた。


 シェールオイルは岩盤にしみ込んでいてそれを集めるには高圧で水を噴射し隙間をつくる。次にこの隙間を埋めてふさがるのを止めるために、砂を割れ目に注入してつっかえ棒とする。そしてオイルを吸い上げるのだが、実際には水に特殊な化学物質を混入させる。化学物質に汚染された膨大な量の水が地中に注入される。


 またシェールオイルは一カ所の縦穴から地中深くで横穴を無数に掘るがそれでも枯渇が早いので、絶えずリグを移動して掘削地点を変える必要がある。しかし横穴が広がっていて"Sweet Spot"と呼ばれる採算のとれる場所は限られているので、大量の汚染地下水がたまることになる。


 すでにこれまでもオクラホマ州で多発している地震が地下水により断層の地滑りを誘起しているとの報告があったが、このたび科学的にそれが証明された。



 

 Science誌の最新論文によればオクラホマ州のM3以上の地震の発生回数は1976-2007年の期間に比べて2008-2013年は40倍に増加したことをあげて、地震の増大がフラッキングで地下に大量の水を注入したことによると結論づけた。

 

 全米のリグの数は最盛期の43%減となっているが生産量は減っていない。集約化が起こっているためだ。そのため"Sweet Spot"では掘削がさらに進む結果、不安定な箇所ができることによって、「人工地震」が多発している。これとは別に化学物質による環境汚染や水にメタンが含まれるため引火する事故も相次いで住民の訴訟問題に発展している。

 

 現時点でいえばシェールオイルの強引な増産により米国は輸入から原油輸出国に変わったが、その代償を知ることになりそうだ。シェールオイルは掘削方法が根本的にこれまでと異なり、米国式の機械力にものをいわせて生産量を上げても長続きしない。地下水と掘削で弱くなった地盤、それに加えて化学物質の環境汚染に悩むことになるだろう。


 オクラホマ地質調査所(Geographical Survey)の見解を記しておく。最近の地震多発により解析の仕事が増えたため、専門家を新たに加えた、ことを地震学者のオースチンホランド紙が発表した。調査委員会は過去5年間の多発する地震についてシェールオイルとシェールガス掘削により地下にたまった廃水との因果関係について調べている。


 地質調査所の発表では昨年のオクラホマ州のM3以上の地震は585階に及び、今年に入ってからすでに260を越えた。オクラホマ州の地震は下の図に示すように、全米でも少ない地域であった。また上の図のように震源地の中心に大規模油田が位置していることから、フラッキングとの因果関係は濃厚になってきた。

 


下にオクラホマ州の地震発生の統計(地質調査所)を示す。異常な発生頻度は明らかである。シェールガスの急速な増産は2009年のオバマ政権になってからである(一番下の図)。