15年後に登場するか−"Progress Eagle"

Mar. 21, 2015

 A380は2階建てでモノクラスなら800名を乗せることができる世界最大の旅客機である。A380の受注が伸び悩む中で15年先の近未来に800人乗りの超大型機"Progress Eagle"計画がある。


 Progress Eagleは3階建てでA380より大きく実現すれば世界最大、史上最大の大型機となる。3階建てといっても胴体は平べったくコンセプトであるクジラのような、ユニークな機体であるが、客室を主翼と一体化した構想(ブレンデッドウイング)はボーイング社が提案している797にも採用されている。Progress Eagleは胴体を押しつぶした形状で、主翼に客室を設ける797よりは普通の旅客機に近い。


 とはいえ全長80m、全巾96mはA380の73m、79.8mよりそれぞれ、10%、20%拡張された寸法である。機体は大きいばかりでなくカーボンファイバーなど先端材料を取りいれて軽量化し環境負荷の少ない再可能エネルギー推進システムのエコプレーンでもある。斬新的なプロジェクトはスペインのOscar Vinalsが提唱するもので、797同様に動画をみる限り、まさに空飛ぶクジラである。

 


 

 空の大量輸送時代にエアバス社は既存の方式内で大型化をはかりA380を開発した。ボーイングは当初対抗姿勢をみせたが、中型機で直行便の至便性を重要視した結果、787を生み出した。両機とも別の方向に舵をきったかのようであるが797はボーイングが大型機構想を持ち続けていることを示しており、大量輸送の必要な路線をより広い室内空間で快適な空の旅が次の世代には要求されると考えた。それは既存の枠に拘らない斬新な設計で、環境性能とエコ、そして快適性を大型化と同時に実現する機会ととらえるのは自然な流れである。

 

 Progress Eagleプロジェクトは大学、研究所の先端材料研究成果を実用化してカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素系先端材料を多用する。機体の上面には太陽電池パネルを備え、ゼロエミッションの推進システム(注)を持つ。3層構造の客室前方はパイロット気分が味わえるように世界で初めてパノラマ窓を備え、客室内部は外の景色が映し出されることで、乗客は鳥になった気分になる。先進的な材料、斬新な設計、乗客の快適性と少ない環境負荷が特徴である。

 

(注)全体で6基の水素燃料エンジンを備える。水素は大気中の水分から太陽光発電の電力で発生させる。胴体後部のエンジンは上空で停止した後は風力発電でバッテリーに蓄電される。4基のエンジンは主翼に取り付けられ、残る1基は胴体内に装備し、垂直方向の浮力を得るために使用する。

 

 なお安全性のため非常着陸が避けられない時には着地直前に主翼は切り離され出火の恐れのある機材は客室から離脱させる。この他、主翼の複雑なウイングレットやコックピットを独立させた構造など、どれをとっても奇抜なデザインである。大型旅客機の新規参入ではボーイング社とエアバス社に潰されるが、800人規模ではどうなるか興味深い。いずれにしても既存メーカーでないところから斬新なアイデアが出てきたことが注目される。ただし航空工学的に修正すべき箇所も多い点では、現状はコンセプトモデルといえる。