クリントン国防長官任期中の私的メール疑惑

Mar. 11, 2015

 

 未成年の強制売春事件で逮捕された米実業家ジェフリー・エプスタインとビル・クリントン元米大統領との友好関係の疑惑が浮上して間もないなか、今度はヒラリー・クリントンが国防長官任期中に私的メールアカウントを利用したことが発覚、様々な疑惑が問題となっている。


公的記録がないことから発覚

 連邦政府の公文書館では、連邦政府機関による記録保管法(Federal Records Act)に基づいて、国務長官などの政府役職者が職務中に使用された公式メールアカウントでのメールやりとりを政府の公的記録として保管することが義務付けられている。特定の機密資料以外の任期中の任務に関わる資料、手紙、メールは全て保管される。


 公式メールアドレスが使われなかったことから、メールは国防省サーバーに保管されず、公的記録がないことが発覚。クリントン氏が国防長官任期中に私的メールアドレスを使っていたことが明らかになった。そのことに対してメールの内容はすべて公表できると発表し、数十万ページの資料を検討した後、5,500ページに限定したメール資料を国防省に提出した。


 しかし、2012年にリビヤ、ベンガジのアメリカ大使館攻撃で大使を含めてアメリカ人4人が襲撃されたベンガジ事件を調査している下院委員会は、明らかに全てのメール、特にリビヤ外交、国防長官としてリビヤ訪問、ベンガジ事件に関するメールが公表されていなことから、5日に公式召喚令状を発行したのである。

 


複数のメールアカウントを使用

 民間監視機関のJudicial Watchによると、クリントン氏は7年間に渡り意図的に秘密のメールアドレスを使っていたことを問題視している。また、6日には、コンピュータ・セキュリティーに関わるホワイト・ハット・ハッカーは、「clintonemail.com」のドメインネームで複数のメールアドレスが使われていたことを明らかにした。クリントン氏以外にも、事務所スタッフにもメールアドレスが与えられていたとされる。今の所、分かっているのが、

 

 hdr@clintonemail.com

 hdr18@clintonemail.com

 hdr19@clintonemail.com

 hdr20@clintonemail.com

 hdr21@clintonemail.com

 hdr22@clintonemail.com

 h.clinton@clintonemail.com

 Hillary@clintonemail.com

 contact@clintonemail.com

 mav-suit@clintonemail.com

 

のメールアドレスであるが、まだ複数あるとされている。



問題点

1. 公務中に公式メールアドレスではなく、私的メールアドレスを使ったことは法律違反である。

 

2. 公文書館で保管されたメールを含む公文書は、一般の国民に公表される資料であるため、全ての資料が提出されるべきである。クリントン氏により公表する資料が選別されるのは問題である。

 

3. 複数の個人メールアドレスを秘密に利用した理由とは何か。そうして、意図的に情報公開を避けるために使われたのかを明確にするべきである。また、情報公開ができない情報とは何か。

 

4. 個人メールアドレスを使うことで、国防省に国家防衛に関わるすべての情報が提供されたのかを検証することが重要である。


 大統領選に出馬が確実視され党内でも圧倒的な支持を得ているクリントン氏だが、国家安全保障を預かる責任者として意識の低さが今回の事件で露呈した。資質の問われる大統領選挙ではヒラリー氏の公私混同のふるまいはマイナスイメージとなるが、それ以上に問題となるのは私的メールアカウントでどのような外交をしていたのかである。事件をきっかけにアメリカの裏外交が明るみにでる可能性もある。