独自開発傾向が強まるハイテク兵器開発

16.12.2016

Credit: Sukhoi

 

性能では上回るノースロップ・グラマン社の試作機YF-23を政治力で蹴落として、世界最高性能を歌い米空軍に採用されたF-22ラプターは製造コストの高騰で生産が打ち切られた。より低コストの汎用ステルス量産機として配備されつつあるF-35も日本や韓国に採用されながら、同様のコスト高騰と生産の遅れで批判の対象となっている。

 

一方、世界的にはステルス機能を持つマルチロール5世代戦闘機の開発は世界各国が独自に行い、ロシア空軍のスホーイT-50、中国のJ-20も実戦配備に近い。さらにスエーデン、インド、日本も独自にステルス戦闘機の開発研究を行っている。中でもインドはHAL社のAMCA(AdvancedMedium Combat Aircraft)と呼ばれる第5世代戦闘機プロジェクトで7-8年後の初飛行を目指して、開発が活発化している。

 

HAL社(Hindustan Aeronautics Limited)はこれまでもロシアのスホーイ社と共同でSukhoi/HAL FGFA(ロシアのステルス機PAK-FA(T-50)の派生機を開発実績がある。当初FGFAはインド空軍向けに開発されたが、HAL社はPAK-FAに改良を加えロシア空軍のT-50を上回る高性能ステルス機に仕上げた。性能向上の費用はロシアとインドが対等に支出したとされる。

 

しかしここでも先進的なアビオニクスの装備などハイテク機材を詰め込んだFGFAの製造コストが、当初予算(60億ドル)を大幅に超過することになり、当初の計画ではロシア空軍とインド空軍がそれぞれ250機を購入する計画であったが、インド空軍は購入予定を144機に縮小せざるを得なくなった。

 

インド空軍向けのFGFAはHAL社において生産される予定であったが、F-22やF-35同様に生産スケジュールの遅れが目立ち、2016年にはロシア空軍もFGファ購入機数を減らすなど、計画の縮小が現実化した。第5世代戦闘機配備の遅れがコスト高騰にあるためロシアとインドは新たに低コストのステルス戦闘機を共同で開発することとなったが、このことでロシアが共同開発した新型機をインド側の100機の購入と引き換えに、技術を共有することになった。

 

新たにHAL社が開発するAMCAは2エンジン単座型のコンパクトなマルチローリ戦闘機で、最新のステルスとアビオニクスを持ち最大速度マッハ2.5、航続距離4600km、2トンの兵器を収容するF-35をしのぐ高性能機となる。

 

AMCAの設計にはADA(Aeronautical Development Agency)を組織して4000名の技術者が開発、設計を担当しHAL社が生産する。先端技術が総動員される第5世代戦闘機開発は開発予算の高騰が避けられないがハイテク産業の景気刺激と技能労働者の雇用対策の効果も大きい。米国系ステルス戦闘機の生産の遅れとコスト高騰を尻目に雇用コストで有利なインドが低コスト化高性能ステルス機を配備すれば中国に大きな脅威となる。中国のJ-20は初飛行を終えているが、中国は先に開発したJ-15にも問題が発覚し機体性能に多くの疑問が生じ張子の虎となる可能性が高い。

 

Source: Asian-defence.net

 

上の写真は航空自衛隊次期戦闘機(F-3)の開発のためのステルス戦闘機プロトタイプ。今やステルス機開発のセオリーは米国やロシアの機体のライセンス生産や共同開発で明らかになれば、ステルス用表面被服材料やフェーズドアレイレーダー技術などハイテク産業の総動員で米国、ロシアの機体より低コスト・高性能の機体が短期間で開発できるようになった。とりわけアジアの空軍勢力にインド、中国、日本の独自開発による第5世代戦闘機が強い影響力を持つことと米国、ロシアの相対的な影響力低下は顕著となる。

 

ハイテク技術と雇用でインドがハイテク兵器開発において有利な立場に立つことと同時に米国の同盟国への兵器開発に影響力(圧力)が低下したこともある。日本のF-3戦闘機を日本が独自に開発することに対して、米国の圧力を避けられるか現時点では不明である。