欧州で検出された核種I131の起源

21.02.2017

Photo: yournewswire

 

欧州で検出される放射性核種

ノルウエイのスヴァンホフトの地面で通常より高濃度の放射性核種の検出が1月にも報告されている他、スペインの上空の大気からも微量の放射性核種が検出されている。

一方、欧州の大気中の核種をモニタリングしているフランスの原子力安全機関IRSNは、2017年2月13日に微量の放射性核種I131を検出した。

 

微粒子の測定値は0.31μBq/m3で、気体と合わせて1.5μB/m3は健康被害のでる値ではない。

 

しかしI131は半減期8日と短いのでこの核種の存在は新しい核反応があったことを示唆している。IRSNは欧州の核種監視網を使って監視を強化するとしていたが、米国は核爆発の大気汚染を観測するWC-135大気調査機を欧州に派遣して調査にあたっている。

 

WC-135大気調査機は311福島第一原発事故の際にも日本に飛来して分析を行った。核種を分析して核爆発があれば規模やその詳細な情報を得ることができる。Twitterではロシアが北極近くのノヴァヤ・ゼムリャで核実験を行ったとの憶測が飛び交っている。しかし地震波の検知はなされていないので核爆発の可能性はない。また核実験禁止条約に違反した核実験を開始することは考えにくい。

 

 

では何が起こったのだろうか。最も考えられるのは放射性物質の漏洩事故である。フインランド、スエーデン、ロシアの原子力施設の可能性がある。またロシアは原子力潜水艦の他、キーロフ級巡洋艦や砕氷船にも原子炉を備えている艦船を多数所有している。また北極には原子力発電施設もあるし、冷戦の名残として核施設を有する海軍基地も残っている。

 

 

北極に残る冷戦の爪痕

冷戦後にロシアの原子力船は多くが解体されたが、その作業中に核事故が起きる可能性はこれまでにも指摘されていた。解体された原潜から抜き取られた80基にも及ぶ小型原子炉はサイダ湾の近くの核廃棄場に保管されているが、さらに保管数は増えて最終的には155基となる。

 

また北極は冷戦時に原発、原子力灯台、核廃棄場など多くの核施設も設置された。ロシアは大量の核施設を北極に近いコラ海に投棄した。またコラ海に沈没したK-27原潜の原子炉が海底に眠っており、海水汚染が迫っている。使われなくなった北極の核施設は深刻な核汚染源となる危険性がある。ロシア海軍の沈没した原潜はこのほか、バルト海に沈んだK-159やノルウエイ海のそこに眠るK-278がある。しかしロシアだけでなく米国もグリーンランドの基地に原子炉を設置し、核汚染リスクの例外ではない。

 

冷戦の爪痕は北極に核汚染の時限爆弾となっている。この脅威から逃れるにはフランスの欧州核種監視網のような国際的な監視網を整備することが必要である。