新型触媒で水がクリーンエネルギー源に

31.12.2016

Credit: Stanford Univ.

 

水素を燃料とする燃料電池はゼロエミッションの次世代エネルギー源として注目されている。トヨタやホンダは世界唯一のFCV販売メーカーである。また現在は天然ガスを燃料とする家庭用燃料電池を、将来は水素ネットワークに置き換えた水素社会に向けて準備が進められている。

 

しかし水の電気分解で大量の水素を製造するには大電力や火力が必要であるため、原子力が必要だと言うのなら、安全性に問題のある原子力(注1)から再生可能エネルギーへの転換に水を差す結果となる。火力を用いる場合、天然ガスから水素を熱分解で得るために高純度水素が得られない。

 

(注1)原子炉の規制強化で建設コストの高騰に夜財政難、建設遅れが顕著になってきたが、原子力のバックエンド(使用済み核燃料の処理)を含めれば排出ガスの優位性も経済性も失われる。現時点で原子炉建設が活発なのは中国をはじめとする成長途中の国々に限られる。

 

そこで水分解に触媒を使って電気や太陽光をエネルギー源として用いる光触媒や人工光合成の研究開発が活発化した(下の模式図)。日本は光触媒の先進技術を持っていたが現在では世界各国がこの分野に参入して追い上げている。水分解から水素を得るとことでエネルギーを蓄積できるので、燃料電池と組み合わせて安定な電源となり蓄電(エネルギー貯蔵)が可能になる。

 

 

Source: phys.org

 

スタンフォード大学の研究チームは定電圧で水を酸素と水素に分解する新しい水分解単触媒を開発した(Nature Comm. June 23, 2016)。新型触媒はリチウムイオンバッテリーの技術を電気分解の触媒に利用して低コスト触媒コストの開発に成功を収めたがその原理は他の化学反応にも応用できるとしている。

 

これまでの電気分解では正極と負極にそれぞれ別の電極(触媒)が使われていたが2014年にスタンフォード大学の研究グループがニッケルと鉄を用いて1.5Vで水を分解できることを見出していた。

今回の研究では単一の触媒(ニッケル-鉄酸化物)を正負電極に用いることで、、水分解のエネルギー変換効率82%を確認した。従来は電気化学条件を活性に保つために電極(触媒)材料とPHは正負極で異なり、電解質膜(リチウムイオンバッテリでは高分子膜セパレータ)で仕切られた構造となっていたが、単一触媒は構造が単純で貴金属を使わないため低コスト化が容易になる。

 

プラチナとイリジウムを触媒とした電気分解では1.56Vで開始した分解を持続させるには、30時間後には電圧を40%増やす必要があった。新触媒は1.5Vの電圧印加で200時間以上継続する。

 

新触媒の開発はリチウムイオンの電気化学反応(電気化学的チューニング)(注2)を用いて、電極(金属酸化物)を微細化し表面積を増大させるた微粒子界面同士は強固に結合し電気伝導度が高い。リチウムイオンの電気化学的チューニングによる金属酸化物の微粒子化で高効率のニッケル・鉄酸化物触媒をつくることができる。

 

 

Source: phys.org

 

(注2)電圧印加でリチウムイオンの金属酸化物格子への取り込みにより格子間隔を変化させて電気化学活性を高める技術。格子間隔を減少させて酸化物に成長したプラチナ金属微粒子にミクロ圧縮歪みをかけると水分解効率を90%増大させる。

 

低コストで製造できる新型触媒で太陽光パネルを並列で接続して容易にスケールアップが可能となると期待されている。発電機能の分散化は送電ロスを減らし地域分散型の電力供給を可能とする。化石燃料の枯渇、原子力の安全性・環境問題への対応と再生可能エネルギーの安定化に貢献する持続性の高いクリーンエネルギー社会を実現度が高まった。