ノルウエイの種子バンクに追加されるデジタル図書

03.04.2017

Credit: piql

ノルウエイのスヴァーバル(Svalbard)には人類の絶滅を防ぐために世界中の植物の種子を集めた巨大な貯蔵庫がある。核戦争や食糧危機、天災、隕石衝突などで人類が絶滅の危機に備えて、植物の種子を貯蔵し絶滅を防ぐためである。シリア内戦や北朝鮮による核戦争リスクが一段と高まる中、このほど重要な書物をデジタル化して安全に保管される計画が始動した。

 

ノルウエイの他、ブラジルとメキシコの書籍が世界北極アーカイブ(World Arctic Archive)と呼ばれる保存事業に参加する。事業を担当するノルウエイ企業Piqlによると劣化を防ぐため、デジタルデータはハードデイスクではなくフイルムとして保存する。

同社はEU予算とノルウエイ政府の予算でデジタルデータを1,000年間安全に保存できるフイルムで保管する技術を開発した。フイルムはスバルバード貯蔵庫No. 3の温度を一定に保つ環境で保管する。

 

ノルウエイ領のスヴァーバル諸島は1920年のスヴァーバル条約で40カ国がノルウエイ統治下の非武装地帯とされた。スヴァーバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)は同地方のスピッツベルゲン島にビル・ゲイツの主導で建設された。

最大300万種の種子を保存できるこの貯蔵庫には、現在はノルウエイ政府の支援を受けてGCDT(Grobal Crop Diversity Trus)の管理下で14カ国が共同出資して運営されている。

 

 

Piqlの開発したデジタルメデイアは長期保存に耐久性を重視して開発されたもの。データは感光性フイルム上に書き込まれるが、デジタルデータの他にイメージデータも同じ方法で書き込める。データが書き込まれたフイルムはISO保証の環境下で500年間保存できる。読み出しには貯蔵庫から特定のフイルムを入れたコンテナが取り出され、読み出しシステムで再構築される。読み出しを保証するために読み出しフォーマットは記録媒体にテキストで表示される。ここで書き込み・読み出しコードはオープンソースで公開される。

 

現在のデジタルデータは長期間保管が保証されない。ハーデイスは4年で11%が動作しなくなる。フラッシュメモリはNOR型、NAND型とも書き込み・消去を繰り返すことで絶縁層が破壊されることから、書き込み回数に制限があり、永久保存には向かない。CDもDVDも媒体(樹脂)の寿命がある。Piql社は感光フイルムが低温(-18C)で保存すれば、数100年の長期保存が可能であるところに着目した。

 

 

しかし地球上の種子数は限られているが、デジタルデータは種数関数的に増大する情報爆発では、常時追加していかなくてはならない。また非武装地帯出会っても核戦争になれば地球上に逃げ場はなくなる。現実的には核戦争リスクが高まっていることを警告するメッセージなのかもしれない。