5Gの先端に立つベライゾン

28.02.2017

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国連の下部組織である国際通信連合(ITU)は国際移動通信(IMT)国際規格IMT-2010に向けて5G(第5世代移動通信システム)技術の基礎研究を終えた。ITUは5G技術を通信速度向上の他に信頼性の向上をもたらすことになるため、本格的なIoT普及の中核となる技術と位置付けている。

 

IMT-2020ではデータ通信速度、帯域、信頼性、基地局容量など送受信インターフェース、電力消費、信頼性に関する5G仕様規格が明確にしている。ITU電波通信部門(ITU-R)の5G技術に関する2017年11月の会合で承認される予定である。

 

5Gは定義上は6GHz以下の周波数帯を使って10Gbps以上の通信速度(注1)をもつ次世代の規格である。通信速度の飛躍的な向上には高周波数の利用が不可欠であるため、新たにマイクロ波の領域に踏み出すことになる。世界中の携帯キャリアが注目する新技術には様々な技術課題が累積する一方で、2017年の規格統一に向けてデファクト化を目指す駆け引きも熱を帯びてきた。

 

(注1)現在使われている移動通信規格4Gは通信速度は平均100Mbps、一部現存する3Gは3.84Mbpsである。世代ごとに2桁の通信速度向上になる。2020年の通信データ量が2010年の3桁増大している。4Gの周波数帯は700MHzから3.5GHzであった。5Gは周波数も帯域も大きくなる。前者は約2倍、後者は約7.5倍に拡大する。

 

 

キャリア各社が参入を目指す5Gだが、ベライゾン社は5Gを米国11都市で2017年春から試験運用する予定で、初の5G導入キャリアとなる。試験運用ではマイクロ波通信の性能を評価し5G技術の確立に必要なデータを得る狙いがある。ベライゾン社は5G技術の導入は増大する一方のデータ通信量で通信技術の進化は自然な流れだとしているが、試験運用の実績が世界標準規格のデファクト化に弾みがつく。ベライゾンが先鞭をつけた2017年後半にはクアルコムとノキアの参入も予定されている。

 

原理的には5Gでネットワーク通信速度が100倍(注2)になれば1千万台のデバイスで毎秒10GBのダウンロードが可能になる。一方で通信ネットワークはスマホのような携帯端末のみが恩恵を受けるにとどまらない。家庭で光ファイバーでしか利用できなかったGbps速度でのデータ通信がワイアレス通信で可能になる。また将来飛躍的に増大するIoT端末への利用も5G技術の活躍する分野である。

 

(注2)SoftBank4G LTEのダウンロード最大187.5Mbps。Nuro mobileの端末通信速度はダウンロード150-300Mbps。

 

これまでにも携帯基地局の電波で電波過敏症の人々の健康被害が報告されているがマイクロ波の人体への影響(注3)はまだよくわかっていない。またワイアレス通信の依存度が増せば太陽フレアや核爆発で発生するEMSで通信機能の喪失のリスクもより深刻になる。新技術に代償とリスクはつきものだが5Gにも課題が山積みのようだ。通信速度が上がってもパケット料金が下がらなければ、一般ユーザーは経済的負担が増えるばかりかもしれない。

 

(注3)WHOの報告では基地局の電波に比べて携帯端末からの電波は1000高く、発癌や不眠症、不妊、聴覚・視覚障害、ストレス、感染症、皮膚あれなどの障害を引き起こす場合がある。5Gでは周波数の関係で電波の直進性が高くなるため必然的に基地局の密度が増大する。このため健康被害を危惧する意見も多い。