311地震のメガスラストの挙動が明らかに

12.01.2017

Credit: USGS

 

宮城県沖を震源として発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震では、津波による犠牲者が地震の直接的な被害をはるかに上回った。最大変位量が30メートル以上の大規模な破壊過程は地震発生後約40秒後から100秒後までの時間帯に比較的狭い地域で発生した。しかしなぜこの第2の破壊過程で数10メートルにも及ぶ大きなすべりが発生したのかについては、推測の域を出ていない。

 

カナダの地震研究者グループが日本の研究者グループと共同して、収束型境界の衝上断層(メガスラスト)の沈み込みについて詳しい海底面の調査と数値解析でモデルを最適化し、40kmに及ぶ断層の溝近傍で62mに及ぶ断層滑りの存在を確認した。この研究により実測結果を説明できる断層滑りのモデルが確立した(Nature Commun. 14044 (2017))。

 

下図に示すようにこれまでの研究から提案されている45の破壊過程の断層滑りモデルは、それぞれ断層の溝からの距離に対する変異量が大きく異なる。この研究では地図中に白で示された中央部の断層滑りを水深の精密測定で調べた。

 

 

Credit: Nature Commun. 14044 (2017)

 

実測の断層滑りを再現するモデルにより、得られた断層滑りプロファイルを下図a(青線)で示す。ここで灰色の線がこれまでに提案されている45モデルで、今回の結果は断層から近い場所での滑り変異が大きいことが特徴である。aの赤、緑のモデルに対応したbの歪み量分布もモデル依存性が大きいが、掘削による地質調査の結果に整合する最適なモデルはb-2の青線で示したものである。

 

bの緑線で示した浅部メガスラストが深部より地震の影響が大きく、そのため滑り変異量が大きいとしたモデルが正しくないことがわかった。今回のモデルでは最大60mに及ぶ滑り変位と5m隆起が40kmにわたる断層すべりが311地震直後に生じたことを示している。

 

 

Credit: Nature Commun. 14044 (2017)