拡張現実のインパクトは未知数

23.02.2017

Credit: David Malan/Photographer's Choice RF/Getty Images

 

拡張現実と言われてもピンとくる人はまだ少ないがVRとして定着しつつある仮想現実の一つがAugmented Reality、拡張現実である。ゲーマー以外はVRを身近に感じる人が少ないが、拡張現実はもっと遥かに身近な存在となる可能性を秘めた万人向けの技術である。

 

拡張現実とは

例えば競技で判定の基準となる黄色いラインが芝生の中に突然出現したり、自動車のヘッドアップデイスプレイが拡張現実である。拡張現実は現実の世界とVRを合成した表示技術である。拡張現実はビデオイメージに計算機で処理した画像を合成してデジタル情報量を増強する。

 

学術的には拡張現実は次の条件を満たす技術として定義される。(1) 現実と仮想現実の組み合わせ、(2) インタラクテイブかつ実時間応答、(3) 3D情報として扱われる。新しい技術のような拡張現実は意外に歴史が古く1930年代から始まっているが、スマホの浸透によって急激に利用が進んでいる。

 

拡張現実の表示には眼鏡やゴーグルのようなヘッドマウント形式、スマホやタブレットなどの携帯端末の他に窓ガラスに投影したり液晶画面に合成したりすることなどがある。拡張現実の応用分野としてはナビゲーション、観光支援、軍事の他、外科手術などの医療支援、機械修理、ゲームや娯楽、広告やプロモなど多岐に及ぶ。

 

 

拡張現実で何が変わるか

計算機におけるGUIなど、人間と機械のインターフェースの必要性が認識されるようになって久しい。スマホの液晶表示が拡張現実で映像モニタや地図表示などデジタル情報を現実の世界に重ね合わせることで人間と機械の距離が縮まり機械すなわち計算機を使いこなせるようになるかもしれない

 

拡張現実は高い計算能力を必要とする。処理能力に限界があるスマホではその概念と効果は認識できても、将来の本格的な普及のためには技術を育てて応用分野も開発していく必要がある。例えばトップ写真のようにスマホ画面にかぶせて検索ボタンが表示される。見知らぬ街で迷うことなく所定の目的地に到達することができる。観光客には便利に感じられるだろう。またスマホで気に入った洋服を表示すれば、サイズが表示されるので試着の必要がない。また窓のない超音速旅客機でも拡張現実で外の景色とデジタル情報を重ねて表示すれば、スピードの代償として旅の快適さが損なわれることもない。

 

Source: roadovr

 

拡張現実の課題 

最先端の軍用航空機では情報を表示する拡張現実(上の写真)がコックピットの窓やヘルメットに表示される。しかし情報量が増えればパイロットの負担も増えて現実の認識能力を阻害するという批判もある。スマホの画面の情報量が増えても結局はそれを使いこなすのは人間なので、便利な機能であってもインターフェース技術としてはまだまだ解決しなければならない課題も多い。高齢者や身体障害者の支援技術として考えた時、上の写真のような表示では複雑すぎて実用的でない。

 

情報量が多くなっても結局は情報を読み取る人間の能力にかかっている点に変わりはないい。情報過多は、能力開発にならないばかりか逆に能力を退化させる恐れもある。パイロットやドライバーへの負担とならないために今後も開発が必要なインターフェース技術と言える。

 

 

Magic Leap

拡張現実に似た映像表現にマジックリープ(Magic Leap)がある。マジックリープはMagicLeap社がMixed Reality Lightfieldと呼ぶ概念で現実にさまざまなデジタル情報を投影する技術で、一種の拡張技術と考えることもできる。例えばCGのキャラクターが現実世界を動き回るようにCGと現実による拡張現実がわかりやすい。オリンピック誘致の宣伝動画で渋谷の街にマリオが現れるようなものといえばピンとくるだろうか。

 

Source: goingtoieu.ie.edu

 

目の前の現実空間に生きた恐竜や巨大生物が現れたら教育的には画期的な技術となり得るし手術を見学する医学生に正常な患者の臓器を目の前に投影できれば医療教育にも威力を発揮する。技術の詳細が明らかにされていないので映画やゲームの世界の映像表現技術なのか、社会に普及する人間機械インターフェースとなり得るのかも人間自然に受け入れられるかどうかで決まるだろう。