米国債売却を加速するサウジアラビア

17.11.2016

Photo: International Man

 

 世界各国の中央銀行や政府系投資ファンドは、過去最高のペースで米国債を売却している。なかでも、サウジアラビアは中国やロシアを上回って、これまで過去最大の米国債を売却している。

 

 米財務省のデータによると、2015年10月~2016年9月までに、サウジアラビアは保有する米国債を21.2%、金額ベースで約23.6億ドル相当売却して、保有額が894億ドルと急減した。2016年1月からは売りの勢いが強まり、米国債の保有は9ヶ月連続で30%減少した。サウジアラビアは原油安で、貿易収支は悪化、財政赤字の穴埋めに売却しているが、米国離れでもある。

 

 

 サウジアラビアによる米国離れは、これまで支えてきた「ペトロダラー」体制の崩壊である。ドル以外の主要通貨(ロシア・ルーブルや中国人民元)による原油決済を増やしているからこそ、保有する米国債を売却することが可能となっている。

 

 

 米国債の有力保有者である外国の中央銀行が、保有を縮小しているなか、今後米国にとって深刻な問題となるのが、財政への影響である。「ペトロダラー」体制が崩れたら、各国は米国債を大量に保有する必要がなくなる。そうなれば、米国の財務赤字で、向こう10年に10兆ドルの増加が見込まれている米国債発行残高の買い手が果たして集まるかである。