ベネズエラの反政府デモがエスカレートする理由

23.04.2017

Photo: slate.com

 

 2013年にチャベス政権を引き継いだベネズエラのマドゥロ政権は基本的な政策を引き継いだが、チャベス政権を支えてきた与党が選挙で敗北すると、反米社会主義政権が急激に弱体化した。原油価格の暴落と計画経済の失敗が重なり、インフレと失業率の増加で国民の不満が増大し全土で過激な反政府デモが繰り返され、度々社会騒乱を引き起こす事態となっている(ベネズエラ危機)。

 

 ベネズエラの反政府運動には背景に経済危機で飢餓状態に置かれた国民の怒りがある。インフレ率は1,660%にも及び、食料が手に入らない市民が飢饉に苦しむ最悪の経済混乱となった。政府に抗議する市民たちのデモが街を埋め尽くす状況が続いている。デモ鎮圧に務める無能なマドゥロ政権と危機感を持つに至った国民との激しい対立となった。デモが日増しにエスカレートし鎮圧部隊との衝突が日常化している背景には極限に追い込まれた国民の怒りがあった。国民の大半がマドゥロ大統領の退任を要求しているが、現大統領の任期は2019年までとされている。

 

 

 4月20日の暴徒化した数10万人規模の反政府デモでは最高裁判所の議会の立法権剥奪し、野党が多数を持つ議会を国外勢力に同調したクーデター活動とみなしてこれを無視する評決に抗議して行われたものであった。カラカス西地区で機動隊は催涙ガス弾をデモ隊に打ち込んで散会させようとした。暴徒化したデモ隊と鎮圧部隊の衝突で12名が犠牲となった。抗議デモは警察が野党リーダーのヘンリケ・カプリレス氏を逮捕したことで一気にエスカレートした。

 

 反政府勢力は経済政策の失敗の責任を取って大統領選挙を前倒しで行うことを要求している。マドゥロ大統領も選挙を早め国民との対話に積極的な姿勢を見せたが、現実的には政府機関のほぼ全てを掌握した現政権の独裁政治が継続すると野党支持者はみる。ベネズエラのGM工場を政府が差し押さえたことで操業が停止した。 

 

 

 ベネズエラ政府はこれまでにも操業ができない工場を勝手に没収したり工場経営者を逮捕するなど、常軌を逸した政策によりインフレと飢餓が国民をくり閉めている。恵まれた原油資源と自然環境にも関わらず計画経済の失敗と無能な独裁政権が重なったことで、国民の怒りは頂点に達している。写真はヴェンデッタの仮面(注1)をかぶって過激な行動に出る市民。暴徒化で片付けられる問題ではなく、過激なデモは社会主義、計画経済実験の失敗を象徴したもので、無能な独裁政権への抵抗は国民の権利である。

 

(注1)全体主義のイギリス政府を転覆するため議事堂の爆破などの過激な行動の反政府運動家ガイ・フォークスを主題にした漫画や映画、Vフォー・ヴェンデッタでフォークスがかぶる仮面。Vフォー・ヴェンデッタのVは復讐の意味。

 

 

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