プライバシーを失った英国民

20.11.2016

Photo: alphr.com

 

 英国で調査権限法、別名「詮索憲章」”snooper’s charter”が19日に議会で成立した。米国の愛国者法を強化した、ヨーロッパでは最も厳しい情報監視法となる。元国家安保障局(NSA)のエドワード・スノーデン氏は、監視体制は多くの独裁国を超える規模のものであると指摘している。

 

 「詮索憲章」はトニー・ブレア元首相が立案、一度は野党の反対で廃案となったが、2015年のパリ同時多発テロ事件をきっかけに、テロ対策としてキャメロン前首相がもう一度法案を議会に提出したものである。

 

 

 新しい法律下では、英国民の全ての通信を政府が傍受できるようになる。通信端末(パソコン、携帯、スマートフォン、ブラックベリー、その他)、使用通信ネットワークと使用通信サービスを調査、監視、通信データのメタデータ化することが目的である。

 

 全てのインターネット・プロバイダー、電話会社、アプリ提供会社は、全ての顧客の通信情報を12ヶ月間保管することが義務付けられる。保管するデータには、個人のインターネット使用内容(何を検索、どのサイトを見たか、どのソーシャルメディアにログインしたか)、電話の通信内容やテキスト・メーセージなどの送受信情報が対象となる。政府機関は必要なとき、いつでも傍受が可能となる。

 

 

 政府機関は暗号化の解除を強制執行することができ、完全な暗号化のアプリはほとんど禁止となる。通信会社が通信情報を12ヶ月保管することで、顧客の情報がハッキングにあう、セキュリティリスクにさらされる可能性が高くなる。また、プライバシーの監視が強化されることになる。

 

 テロ対策と称して、国民の通信情報のメタデータ化を構築することが目的であれば、財政破綻状況にある政府にとっては課税対象の個人情報源になりかねない。さらにそれがインターネット税の課税情報として使われるなら、2017年は英国から始まるインターネット税元年となるかもしれない。