ギリシャ債務再建に動くロスチャイルド

21.02.2017

Credit:REUTERS/ Michallis Karagiannis

 

 ギリシャの公的債務は再び維持が困難な状況で、7月に予定されている70億ユーロに上る債務返済の資金が確保できない恐れがある。デフォルト(債務不履行)を避けるため、債権者との追加金融支援の交渉を行ってきたが、一向に進まない交渉に、ギリシャ政府は名門投資銀行のロスチャイルド&カンパニーをギリシャの債務再建アドバイザーに起用する予定である。

 

 

 世界の金融システムの仕組みを作り、200年以上に渡り世界の国家に多大な影響を及ぼしてきたロスチャイルドは、2012年のギリシャ救済の仲介をしてきた米ラザード・リミテッドの後任となる。英ファイナンシャル・タイムズ紙によると、ロスチャイルドはギリシャと債権者との交渉、欧州中央銀行(ECB)が設立した債券購入プログラムの一環にギリシャ国債を含む交渉など国家債務再建に関連する全ての交渉を取り扱うことになる。

 

 

国家資産の売却

 国債通貨基金(IMF)と債権者を代表する欧州連合(EU)とのギリシャへの金融支援の話し合いは紛糾が続いている。2012年のギリシャ債務危機以来、IMFは2度に渡る金融支援を行ってきた。一向に債務問題が解決されないなか、2015年にギリシャへの第3次金融支援がEUとギリシャの間で合意されたが、IMFは支援への参加を見送った。

 

 これまでEUはギリシャにギリシャに厳しい緊縮財政による財政再建を求め、GDPの3.5%のプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の赤字を出すことを求めてきた。さらにl金融支援の条件としてギリシャはGDP拡大と債務返済のために、空港、港、高速道路などのインフラの民営化、公共施設、エーゲ海諸島など国有資産の売却を行ってきた。

 

 この状況で、ドイツ企業は主要空港を買収する一方、中国企業は港を買収し、その他のインフラ、公共施設、エーゲ海の島や再建された銀行も外国企業に売却された。金融支援を受ける見返りに、国有資産の一部を手放したことになる。

 

 

ギリシャ保有の金の行方

 IMFは最早、ギリシャ債務は「極めて持続不可能」な水準に達しつつあるとしてEUの債務元本の削減を求めているが、ドイツは依然として反対を表明している。債権者との交渉でロスチャイルドが進める債務再建策がどのようなものになるかは不透明である。金融支援を受ける度に国有資産を失うギリシャ。国が解体され、価値ある資産が売却に加えて、保有する112.7トンの金(世界第32位)を手放すことになるかが注目される。