TPPからTISAへ向かうグローバリゼーション

15.02.2017

Photo: marxisme.no

 

 米国のTPP離脱にも関わらず、 新サービス貿易協定(Trade in Service Agreement: TISA)の交渉会合が機密に続いている。グローバル企業のロビーイングの場となっているTISA交渉会合は、各国政府の立法能力を規制し、国内企業を弱い立場に追い込み、グローバル企業が優勢にグローバリゼーションを推進する協定である。

 

TISAとは何か

 TISAの名の通り、サービス貿易の一層の自由化に向けた新しい協定である。

2013年4月から始まったTISAの交渉は、すでに21回以上行われてきた。TPPより交渉内容は機密にされ、日本を含め世界50カ国(EU各国を含む)が交渉に参加している。

 

 交渉は米国、EU、オーストラリアが主導、カナダ、メキシコ、韓国、トルコ、パキスタン、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、香港、ベトナム、チリ、パラグアイ、台湾、コロンビア、ニュージーランド、アイスランド、イスラエル、コスタリカ、パナマ、ペルー、スイス、リヒテンシュタイン、モリシャス、ノルウェーが参加している。TPPと同様に、中国の参加は除外されている。

 

 サービス貿易に含まれるのは、実務(自由職業、研究や開発、不動産など)、通信、建設、流通、教育、環境(汚染や廃棄物処理などを含む)、金融(保険、銀行、証券などを含む)、健康・医療関連、観光・旅行、娯楽・文化・スポーツ、運送、その他のサービスの12分野である。

 

 最後に行われた交渉会合(2016年11月)の内容がリークされ、交渉が難航していることが明らかとなった。

 

全てのサービス分野にわたり、参加国の大節合意が得られていない。(そのため、12月に予定されていた閣僚会合が中止となった。)

 

電子商取引、通信、金融におけるサービスの自由化により、ビッグデータを集合、分析できるGoogle、Yahooなどの一部のグローバル企業が優勢となる。

 

各国政府の権限は弱められ、国内法や規制よりTISA協定が上位となる。そのため、健康・医療、環境、個人プライバシー、人権、労働者の安全、経済発展などを十分保護する、規制する政府の立法能力が規制される。この面で、改善はなくグローバル企業を重視した協定のままである。

 

米国が離脱したTPPから国有企業、企業データを外国に移す、電子商取引への規制、会計基準、投資基準などに関する一部ルールがTISA協定に含まれた。 TISAはTPPをモデルとし、TPPや TIPPが成立しなかった場合を想定した代替案とされる。

 

 

 TISAのサービス貿易の自由化には公共サービス(教育、医療、水道、ゴミ処理、電気、ガス、放送、交通、健康保険、銀行、年金など)の民営化が最も市民生活や国への影響が大きい。政府の立法能力を規制することで、各国は自国の市民、企業、産業、環境、国民の自由とプライバシーを保護できなくなる。世界で反グローバリゼーションの動きが勢いをみせているなか、サービス貿易の自由化で一部のグローバル企業を優先したグローバリゼーションは合意に向けて進むのかが注目される。

 

 ウルグアイでは議会の反発が大きいことから大統領が2015年9月に交渉からの離脱を決めている。下の写真はTISA反対派のデモ。

 

Sourece: iuf.org