大規模軍事演習で緊張が高まる欧州

12.03.2017

Photo: theaviationist.com

 

 朝鮮半島では米韓の大規模な合同演習が始まっているが、欧州では複数の対ロシア大規模な演習が行われ、ロシア国境に近い東欧、北欧を中心に北海と地中海近辺の広い地域で東西間の緊張が高まっている。東アジアと欧州での同時東西対立で冷戦終結以来の平穏さは失われた。

 

トライデント・ジャガー2017

 2017年3月8日、ブルガリアではNATOが対ロシアの大規模な演習トライデント・ジャガー2017を開始した。

 トライデント・ジャガー2017はNATO統合作戦本部(JWC)の作成したSkolkan 2.0シナリオに基づいたもので、バイオテロ、サイバーテロ、化学兵器、核攻撃と多様化、複雑化する危機にNATOが対応できるような訓練と説明されている。

 

 

ジョイント・バイキング2017

 ロシア国境から160-300kmのノルウエイ領で700名の米海兵隊を含む8,000名のNATO軍によるジョイント・バイキング2017は極地近くの悪天候の中でのNATOの陸軍部隊の偵察・攻撃能力を高めるためのもので、かつてない広範囲の地域での戦闘を考慮している。演習はロシアを仮想敵国として将来予想される局地戦へのNATO軍艦の連携強化を目的としている。

ポーランド陸軍の将校が指揮する今回の演習は、ロシアとの局地戦を想定して広範囲の機動部隊の展開に備えるものである。

 

 

ダイナミック・マンタ2017

 NATOは毎年ロシア原潜を対象として対潜水艦演習を行っている。2017年の3月13日からフランス、ギリシャ、イタリア、スペイン、トルコと米国の潜水艦が参加してNATO潜水艦司令部の指揮下で、ダイナミック・マンタ2017演習を行う。

地中海で行われるダイナミック・マンタ2017では早期警戒チームが情報をリアルタイム分析結果を参加する艦船と航空機と共有して、NATO軍の対潜哨戒と攻撃能力を高め増大するロシア原潜の脅威に備える

 

 

Source: euromarfor

 

大規模演習の背景

 ウクライナ問題やシリア内戦へのロシアの介入を巡って東西の対立と緊張関係が高まったことで、ロシアとNATOが互いを敵国とする大規模演習が頻繁に行われるようになった。

2016年春にNATOはロシアの侵略に備えるためポーランドとバルト海に部隊を配備すると発表すると、ロシアも東欧の国境沿いの兵力強化を打ち出し一連のNATOに対抗する戦力強化となった。

 

 2016年6月に英国海峡に接近するNATOはロシアの潜水艦を捕捉したことで緊張が高まったが、米ロの対立は地中海と黒海の艦船配備でさらに深まった。2016年の演習では地中海を渡る難民救助やテロ対策の連携強化という側面もあったが、今回の演習は対ロシア局地戦を意識したものである。戦争のきっかけとなる地域が極地から地中海まで、欧州の広範囲に及んだことで、東西の緊張の復活は新たな冷戦の始まりと呼べるだろう。

 

 

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