CIAのフランス大統領選挙諜報活動

19.02.2017

Photo:deccanchronicle

 

 ウィキリークスは2月16日に、2012年のフランス大統領選挙の7カ月前に、米中央情報局(CIA)がフランスの主要政党に対して諜報員と通信傍受による諜報活動を命じる指示書を公表した。指示書は3つ、全部で7ページに渡り、大統領候補の政治戦略と各候補の内部通信に関する情報収集を命じるものである。

 

 

CIAの諜報活動の対象

 諜報活動の対象となったのは、フランス社会党(PS)、国民戦線(FN)、国民運動連合(UMP)の3政党とフランソワ・オランド現大統領、ニコラ・サルコジ前大統領、大統領戦候補のマリーヌ・ル・ペン、マルティーヌ・オブリーとドミニク・ストロス-カーンである。諜報活動は2011年11月21日から2012年9月29日の10カ月間続き、2012年4~5月の選挙の後に新政権が発足した後も続けられていた。

 

 CIAは当時大統領のサルコジ氏が率いる与党UMPの再選は難しいと判断、UMPの党選挙対策、サルコジ氏の選挙対策委員会の選挙戦略、サルコジ氏が他の候補をどのように考えていたか、補佐官とのやり取り、選挙後のUMP政治力や政策転回の可能性などが調べられた。

 

 「野党と各候補の選挙戦略対策」と題した諜報指示書は、社会党のフランソワ・オランド氏と国民戦線のマリーヌ・ル・ペン氏を中心に、

 

・各野党の選挙対策

・各党の将来性や将来注目される政治家

・政治的政策の意思決定への影響力

・地方自治体から支持状況

・米国政策に対する見解

・政党や候補者の政治資金源

・対外政策(特にドイツ、英国、リビア、パレスチナ、シリア、コートジボワールなどに対する外交政策)

・フランスの経済成長を高める政策

・輸出主導型の経済成長モデルを推進しているか

・EU経済危機への見解

・ギリシャ債務危機に対するフランス政府の対応

・ギリシャ破綻によりフランスの金融危機が発生した場合への対応

 

などが調査された。

 

 諜報活動で収集した情報は、CIA、アメリカ国防情報局の欧州支局、国務省戦略諜報局情報研究室などの活動を「強化」することを目的としている。

 

 

ロシアのフランスの大統領選挙への関与疑惑

 今では「フェイクニュース」と呼ばれているCNNは、10日にフランス大統領選挙にロシアが関与して、国民戦線のマリーヌ・ル・ペン氏を当選させようとする可能性が高いと報道した。ロシアが米国大統領選に関与して、トランプ候補を当選させたとする疑惑騒動(ロシアの米大統領選への関与はなかったとの結論がでている)と同類の報道である。

 

 

 今回のウィキリークスのCIA指示書の公開で、米国CIAが他国の大統領選挙の諜報活動を行なっていたことが明らかになった。しかしウイキリークスやオルタナテイブ・メデイアで真実を自分で調べる人が増えたため、諜報機関の選挙工作やメデイアの意図的な誘導の効果は薄くなっている。