脳機能を活性化する頭脳トレーニングとは

18.10.2017

Photo: bebrainfit

 

ジョンズホプキンス大学の研究グループは研究で用いる頭脳トレーニングのひとつが脳活性化に役立つことを発見した。この方法で運動能力同様に脳機能を頭脳トレーニングで鍛えることが可能であることがわかった(Blacker et al., Journal of Cognitive Enhancement online Oct. 16, 2017)。

 

これまでにも頭脳トレーニングによる機能活性化の効能については賛否両論があったが、今回の結果は特定の頭脳トレーニングを使えば、確実に脳機能活性化が可能となることが明らかになった。研究グループが注目したのはどのような頭脳トレーニングが活性化につながるのか、という点であった。

 

実験では各種の頭脳トレーニングを比較し、その前後での脳機能の活性化度を実時間観測しどのトレーニングが効果があるかを調べた。研究グループは若い世代の被実験者を3グループに分け、脳波の実時間観測で記憶能力、集中能力、知的判断能力について調べた。被実験者は一旦帰宅して計算機の演習を一ヶ月続けた。2つのグループは別々のトレーニングを行い、3つめのグループはコントロールとして頭脳トレーニングと関連の仕事をこなした。

 

頭脳トレーニングは研究グループが独自に開発したもので、毎日、30分間毎週、5日間にわたって行われた。その結果片方のトレーニングプログラムを受けたグループは記憶力が30%アップし、もう一方は約半分の増加であった。この結果から研究グループは頭脳トレーニングの効果はトレーニングプログラムに強く依存しており、効果の有無の問題ではないと推論した。

 

最大効果を得られたトレーニングは記憶シーケンスのテストで連続する視聴覚事象を記憶する二重Nバック課題トレーニングと呼ばれるものである。テストは同じ文字(音声とライト点滅)パターンの重複を判断するもので、回数が進むにつれて被試験者は3回、4回と連続パターンを記憶できるようになっていった(下図では正方形の光の位置と文字の関係が同一の場合を識別する)。

 

 

Credit: i3mindware

 

効果の低かったスパン課題プログラムでは連続して記憶するべき事象の間に注意力を妨げるような事象が挿入されており、連続パターンを記憶する必要はなかった。このことは電話番号や道順などのような短期記憶能力のトレーニングが脳機能活性化に役立つことを示している。つまり頭脳トレーニングに有効なのは習慣や経験などの長期記憶でなく、刻々変わる短期記憶のトレーニングであることが明らかになった。

 

 

Credit: Johns Hopkins Univ.

 

 

研究グループは次に、このような頭脳トレーニングが脳機能活性化をもたらすメカニズムを明らかにしたいとしている。近い将来、特殊な頭脳トレーニングを教育機関で導入すれば、30%以上頭脳明晰な頭脳集団が誕生するかもしれない。