エールフランス機がエンジン損傷で緊急着陸

2.10.2017

Photo: au.news.yahoo.com

 

10月1日にパリからロスアンジェルスに向けて飛行中だったエールフランスAF066便(乗客496人が登場したA380)が、第4エンジンに重大な損傷が発生したため、飛行を中止してニューファンドランド・ラブラドール付近のグースベイ空港に緊急着陸した。

 

写真のように軽微な損傷ではなくカウルがターボファンと一緒に吹き飛び、エンジン自体も脱落しかけている。ターボファンエンジンの構造は下に示すように推力の大半を先頭のファンが作る空気流で、タービンを回転するために吸い込んだ空気の一部を同軸のタービンで圧縮し、燃料と混合して燃焼させる。

 

圧縮空気が多いほど燃費が良くなるため(高いバイパス比)、大口径の初段圧縮タービンブレードが採用されるが、エンジン軽量化のためにブレードの軽量化で機械的強度が損なわれる。大気汚染で酸性化した大気中を運行するとブレード表面のコーテイングが侵食されて、クラックが生じるケースが報告されている。

 

 

Credit: reddit

 

ターボファンエンジンでは初段の圧縮タービンのわずかな部分が破損して飛び散ると、回転が乱れ他のブレードも外側のカウルに接触して、全体が吹き飛ぶことになる。タービンブレードの破片はカウルを突き抜けて燃料タンクを損傷すれば大事故につながる。

 

A380は2005年に初飛行した世界最大の4発ターボファン機で2階建キャビンで知られる。大型のため離発着に制限ができるため長距離路線に使用されている。A380のエンジンはロールスロイス社のトレント900とプラットアンドホイットニー・GEの合弁企業(エンジン・アライアンス)が選択できる。今回の事故を起こしたエンジンはエンジン・アライアンス製であった。

 

これまで就航直後のカンタス航空のA380の第2エンジンが爆発炎上事故を起こした。この時はトレントエンジンの製造ミス(オイルパイプ破損)とされている。吹き飛んだ部品がカウルを突き破って、燃料タンンクやセンサー配線を破損し燃料が漏れていた。

 

エンジン事故増加の背景〜採算性の圧力

ターボファンエンジン不良の増加の背景にはエアライン同士の競争が激しくなり燃費低減はエンジンメーカーに圧力がある。またエンジンの整備を委託に頼るエアラインがほとんどで、業務委託の管理が徹底しなくなっている人災的因子も見逃せない。採算性は運行時間が長いほど、すなわち飛行している時間が長いほど良くなるため機体、特にエンジンへの負担は増加する一方である。

 

5年毎のオーバーホールではタービンブレードは徹底的に検査されるが、現在の飛行スケジュール(特にLCC)の積算飛行時間を考慮すれば、1年毎の定期点検での内視鏡検査だけでは不足している。また委託企業がエンジンメーカーの検査基準と同等である保証はない。採算性と安全性を秤にかけるような状況が続けば、事故率がどこかで急激に上昇する恐れがある。