フランスの原発緊急閉鎖でEU電気料金が高騰

29.10.2016

Photo: thinglink

 

フランスの原発の問題で稼働停止が相次いだため、冬場のEU電力卸売会社は軒並、冬場の電力料金を値上したことで混乱が生じている。緊急停止の理由はフランスで稼働していた原発に使われている部品に不良が見つかり基準を満たさないためである。

 

現在19基の原子炉が電力網から切り離されているが、さらに12基が続く可能性がでてきた。このような大規模の原子炉停止は福島第一事故以来となる。このため大手5社の卸売業者の懸念から、中期価格の値上げとなったが、問題が長期化すれば長期的にもEU電力料金体系に変動が生じるとアナリストは予測する

 

原子力に代わる石炭、石油、天然ガスはEUの排気ガス規制と絡んで原発停止による電力供給を補うことが難しい。2017年のフランスの電力価格はMWhあたり45.6EUとなった。

 

EU最大の電力供給国ドイツの販売価格は2年ぶりの高値、33.65EUとなった。今後のフランス原発の停止の長期化でEU電力卸売価格は長期的に高騰するとみられる。

 

 

フランスのグラヴリーヌ原発は900MWクラス原子炉6基で西ヨーロッパ最大の原発であるが、1985年から稼働している5号原子炉が運転基準を満たさないとして停止している。同原発では6号原子炉は20125月に技術的問題で停止している。

 

稼働から30年を超える老朽化による問題とは別に、爆破予告やハッキングによる被害も多くなっており、フランス政府も原子力政策を見直しつつあるが、代替エネルギーへの道を歩みだす中で、厳しい寒さに電力不足は厳しい試練となる。

 

 

オランド政権は電力の原子力依存度を75%から50%に引き下げる公約で当選を果たした。大手原子炉メーカーのアレヴァを吸収したEDF(フランス電力公社)の幹部交代人事で着々と脱原発化を進める中で、電力料金の高騰は政策への不満を高めることになる。

 

 

米国同様、多くの老朽化原子炉の更新が進まない。アレヴァ社とシーメンス社の先端技術を結集した欧州型加圧水炉(EPR)はフラマンベールで建設開始から10年以上経過したが進展が見られない。中国に建設した同型炉はすでに稼働しているのに比べて原子力先進国であるフランスの工期遅れは対照的だ。厳しくなる一方の基準で建設コストが高騰したのが理由だが、バックエンド(使用済み核燃料の処分)の不透明さと安全性で原子力への信頼と期待が薄らいだことは確かなようだ。

 

EUにある195基の原子炉の中でもフランスの59基は突出しているが、ほとんどが70-80年代に建設されたもので、多くが老朽化していることは米国同様である。