ほうれん草を使う爆弾検出法をMITが開発

04.11.2016

Photo: munchies.vice

 

モスル奪還が目の前に迫っているが、ISが退却前に地中に埋設した膨大な数の手製地雷が戦争が終了しても死傷者を生む。地雷を撤去するにはセンサーロボットを想起しがちだが、このほどMITの研究グループがナノテクとほうれん草を使う画期的な爆弾検出法を開発した。

 

この新しい方法ではカーボンナノチューブをほうれん草の葉に埋め込む。このナノセンサーが地中に埋め込まれた爆発物(地雷)から漏れ出す爆薬の成分、窒素芳香物を検出する。研究チームによれば地下水に溶け出した窒素芳香物をほうれん草が吸い上げて埋め込まれたカーボンナノチューブに触れるとカーボンナノチューブが赤外発光するので、それを光学的に検出することで高感度な地中の爆弾センサーとなるという。

 

 

Credit: Nature Materials 2016, 31 October

 

窒素芳香物を検出するには、レーザーを葉に照射しカーボンナノチューブの近赤外蛍光を測定する。これにはコンパクトな赤外線カメラで十分なので、超小型のパソコンキット、例えばラズベリーパイにセンサーを取り付けたものが使える他、赤外フイルターを外せばスマートフォンのカメラでも良い。実際にはこのような簡易機器でも1m離れた葉の発光イメージを調べることが可能だという。

 

このような手法はナノバイオニクスと呼ばれ、生体物質とナノ科学の融合で生まれる新しい分野である。研究グループはこれ以前にも植物の光合成を活用して大気汚染となる一酸化窒素(NO)を高感度に検出するセンサーをつくる研究も行っている。植物の持つ環境モニター機能はナノ科学と組み合わされて、今回の開発となった。何度も指摘していることだが、この研究でも実働部隊は中国人研究者である。ナノ科学の論文の大半を彼らが支えていることに注目してほしい。ナノ科学は先端的観察機器類を別にすれば、これまで西欧の独壇場だった超高真空での分子線蒸着でなくてもコストの安い微粒子成長で物質合成ができるので、中国の大学で研究しやすいのだ。いわゆる人海戦術となれば西欧に勝目はない。