MITのトカマクが超高温プラズマ世界最高圧力を達成

18.10.2016

Credit: MIT Alcator C-Mod Tokamak

 

核融合研究はフランスで建設中のITERがトカマク型で実用化の先端にいるが、トカマク型以外にも世界中の大学、研究所で研究開発が進められている。その背景には化石燃料の枯渇とバックエンドと安全性で原子力エネルギーが期待を失いつつあるエネルギー危機がある。

 

MITのトカマク融合炉が930日に核融合の実現の鍵となるプラズマ圧力が世界で初めて2気圧を超えた。核融合反応は太陽をはじめ恒星の中心で定常的に起こっている原子核反応で、核分裂と異なり連鎖反応で暴走することがない。また高レベル核廃棄物が生成しない(注1)ので、未来(21世紀後半)のエネルギー源として期待が集まる。

 

(注1)核融合炉運転中は強力な中性子線が発生するので容器外に漏れるが運転停止でなくなるので、基本的に原子炉のような周辺への危険性はない。

 

 

しかし連鎖反応がないということは超高温(あるいは超高圧)プラズマを持続できなければ「鎮火」してしまうことでもある。このため世界中の研究機関がプラズマの閉じ込めで超高温状態をできるだけ、高圧かつ長い時間保持することを競い合っている。プラズマ閉じ込めには磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式があり、MITのトカマク方式は前者に属し最も多く研究されていると同時にITERが採択された実用炉に最も近いとされる。

 

核融合反応を持続するためには5000万度という超高温プラズマを一定体積の空間で圧力と時間を持続する必要がある(核融合条件)。そのためこれを実現する3つの指標、プラズマ密度、持続時間、温度を巡って熾烈な研究開発競争が続いている。ここでいう圧力はプラズマ密度と温度の積であり出力エネルギーはその2乗に比例する。

 

 

MITのトカマク炉は5.7Tの磁場中で3500万度の高温プラズマの圧力が、世界最高の2気圧を記録した。プラズマ体積は1立方m、持続時間は2秒であった。他の研究機関のトカマク炉では1気圧のプラズマである。遅れてITERに参加した米国は2012年に財源難からMITトカマク予算を削除したが議会が3年間の延長予算をつけ、その期限となる9月て30日に成果を出したことになる(注2)。

 

(注2ITERの予算の60%EUで残りを日本や中国などで分担するが、米国はITERに参加せず独自に核融合研究を進めたが、方針を変更してITERへの参加を決め国内予算を減らした。核融合研究を原子力同様、軍事研究とみなしてレーザー核融合に中心を置いてきたためである。最近では企業が小型核融合炉研究を進め民間の研究開発が活発になった。ITERに参加してトカマク炉の研究レベル向上を狙ったが米国のトカマク研究は最先端とはいえない。

 

 

 

MITトカマクは他の研究機関に比べ小型でITER1/800スケールである。最近になって大型化が必ずしも実用炉に必要ない、とする論文が発表されると小型トカマク炉への期待が高まった。原子炉も次世代型は小型高速炉であり核融合炉も小型化への道を歩むことになる。”Bigger the better”の終焉が顕著になりつつある。