FBIがクリントン氏を起訴しない本当の理由

08.11.2016

Photo: nationalreview

 

 米連邦捜査局(FBI)のコーミー長官は6日に、ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題の捜査について、当初の7月の結論を維持し、起訴しないことを発表した。新たに発見された650,000件の電子メールを全て捜査した結果から結論を出したとしている。しかし、650,000件の新たなメールを8日間で、読み取り,分析、起訴対象であるかを判断することができるのか疑惑の目が向けられている。

 

 これまで、ウィキリークスが公表したクリントンやポデスタ・メール(注1)を見ても分かるように、膨大なメール内容を理解することは容易ではない。メールやり取りには、ペンネームや代理が使われ、暗号や関係者以外が理解できない言葉や内容があるため、メールを読むのに時間がかかるからだ。FBIは全てのメールを捜査したと発表しているが、8日間で解析完了ということは、1.06秒間に1通読むことになる。これは形態素解析ソフトを使わない限り不可能である。

 

(注1)ウイキリークスが暴露した民主党選挙対策本部長ジョン・ポデスタ氏の一連のメール。TPP反対の立場でありながら障壁なき自由貿易構想を提唱する矛盾に満ちた姿が浮き彫りになったことで批判されている。

 

 

不完全な捜査

 国防情報局のマイケル・フリン前長官は、6万件のメールを捜査するのに1年かかったのに、650,000件を8日間で読むのは不可能だと指摘する。ウィキリークスも、8日間24時間体制で、504人の捜査官が1通のメールを3分で読むと推測、情報の処理や管理に必要なサポート・スタッフを入れると1000人の捜査官が参加しなければ、650,000件のメールを読み切ることはできないとしている。

 

 「再捜査したが犯罪性はないため起訴しない」としたFBIの発表はクリントン氏の私用メール問題への捜査を終了させることを意味する。これによって、同候補の国家機密の漏洩の疑いが取り除かれたことで一連のメール問題が幕引きとなたっため大統領選への影響力が大きい。その裏にはどのような事情が隠されているのだろうか。

 

 

オバマ大統領の関与

 オバマ大統領は、クリントン氏が国務長官在任中に私用メールサーバー(注2)を使っていたことを認識していなかったと繰り返し訴えてきた。しかし、ウイキリークスが公表したポデスタ・メールには、オバマ大統領とクリントン国務長官とのメールやり取り、メール問題が発覚してから、オバマはPOTUSの偽名を使ってクリントン氏とメールやり取りを行っていた。

 

(注2)国家公務員は公務出張の際に私用デバイスを国外に持ち出してはならないなど公務での私的デバイス使用に厳しい制限がつく。国務長官の立場で情報漏洩リスクの大きい私的サーバーで通信を行うことは、こうした公務員規定に反するばかりでなく国家機密漏洩に加担したと批判されても仕方がない。クリントン候補はiPhone、iPad、Blackberry端末を所持していたが、1つのデバイスしかもたなくてもいいようにしたと虚偽の証言をしている。

 

 オバマとクリントンとの過去のメールの消去処理を求めるメールから、クリントン・メール問題に現職の大統領が関与していることをもみ消そうとしたと推察できる。オバマ大統領とロレッタ・リンチ司法長官がFBIに圧力をかけて、自分に捜査(隠蔽工作)が向けられないように、圧力をかけたたことで一連のFBIの不可解な動きが矛盾なく説明出来る。メール問題は大統領の司法介入という米国の民主主義の根幹を揺るがす問題につながる可能性が高くなった。