視覚情報認識メカニズムのモデル化

14.06.2017

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画像情報をソフトウエアが認識することの難しさは自動運転ソフトの困難さで容易に理解できるだろう。脳内で視覚情報処理を受け持つ視覚野に関する新しい研究で、大脳皮質コラムの認識メカニズムが明らかにされた(Nature Comm. 8: 15739 (2017))。

 

視覚情報処理では大脳皮質コラムの動作が繰り返されているが、正確な網膜の情報伝達メカニズムを調べることは脳神経伝達の詳細を知る手がかりとなる。このメカニズムは数式処理の反復による計算機ソフトウエアでは再現することが不可能である。複雑な視覚情報処理には脳の1/3がこのために関わっているとされる。

 

 

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視覚情報処理は網膜の視覚情報の入力に始まる。映像情報は脳の視覚情報処理の第一歩となるエッジ検出を受け持つ視覚野のV2領域に伝達される。このエッジ情報によって人間は物体を認識しその運動を検知する。しかしこの正確なパターン認識のメカニズムは未だに理解されていない。

 

研究グループは映像情報と脳活動の関係に関する公開データベースから統計的手法で視覚情報認識モデルを構築し、視覚視野がエッジ情報に反応することを見出した。研究グループはV2領域は同じ方向のエッジを集合して認識精度を上げ、①特定方向のエッジと位置情報を認識する、②その場所での垂直方向の認識感度を下げる”Cross-orientation suppression”(情報に重みがつく)、③関連するパターンと比較を繰り返して、視覚情報の認識を行う3つのプロセスがあると結論した。

 

研究グループはこれらの要素からなる視覚情報認識モデルは嗅覚や聴覚情報認識にも応用が可能だとしている。人間の視覚情報認識のメカニズムの今後の研究で理解が深まると期待されている。