大気中のCO2からカーボンニュートラル燃料を製造

22.07.2017

Photo: thegreenhome

 

カーボンニュートラル燃料とはもともと地球上に存在する炭素サイクルの一部から燃料(メタノール)を合成して、燃料とすることで炭素サイクルに影響を与えない燃料のことである。これまで穀物からメタノールを合成するバイオマスが代表格であったが、バイオマスの全プロセスを考慮するとカーボンニュートラルとは言えなくなることと環境保全の観点で、大気中のCO2を固定して燃料を合成する技術が本命視されるようになった。

 

フランスのパリ大学とアルゼンチンのコルドバ大学の研究グループはCO2からメタンを製造するカーボンニュートラル燃料製造技術を開発した(Rao et al., Nature online July 17, 2017)。新しい手法ではアセトニトリルに溶かした CO2をトリメチルアンモニアで修飾した鉄ポルフイリン触媒により太陽光照射下でメタンに還元される。

 

研究グループはCO2からCOへの還元反応触媒として知られる鉄ポルフイリン触媒が太陽光エネルギーで、COの一部を水素化することを見出した。数時間の光照射で鉄イオンの価数変化を含む複雑な還元反応サイクルでメタン、CO、水素が生成される。下図でポルフイリンのヘムFe(III)イオンは3電子を供与され触媒活性のあるFe(0)状態となる。Fe(0)状態は光励起によりCO2からCOが生成される(1電子還元)。Fe(I)状態は光励起でFe(0)状態に戻る。

 

 

Credit: Nature

 

現時点ではCO還元の選択性は82%だが反応が遅く、メタン生成のエネルギー変換効率は0.12%に過ぎない。そのためメタンの収率は12グラム/時と高くないが、将来的に反応効率を上げれば大気中のCO2を原料としてメタンが製造できることが実証された。今後、焦点は水素化メカニズムを解明し水素化触媒の最適化に絞られる。

 

反応はCO2の還元でCO(HCOOH)が形成され、CO中間体を経由する水素化反応によってメタンが生成される2段階プロセスだが、最終段階の水素化のメカニズムが不明で、水素化の効率を上げる課題が解決すれば一気にメタン収率の改善が期待できる。

 

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