人体の動きで発電する極薄膜デバイス

24.07.2017

Credit: techxplore

 

人間が動き回ることで発電し充電が可能であれば携帯端末のバッテリー充電に気を使う必要もなければ、電気のない野外でも不便はない。ヴァンダービルト大学の研究グループは発電機能を持つ上着やスカート、シャツで発電を可能とする黒リン極薄膜発電デバイスの研究開発に成功した(ACS Energy Lett., 2017, 2, 1797)。

 

このデバイスはサブナノメートル(オングストローム)厚の黒リン(注1)極薄膜(上のTEM写真)を折り曲げたり、圧力で発電する一種の圧電素子で、ヴァンダービルト大学のナノマテリアルエネルギー研究所が開発したものである。

 

(注1)黒リンの極薄膜(ナノシート)はギャッップを持つ半導体材料として次世代デバイスに応用が期待されている。最近ではグラフェン状の2次元膜(フォスフォレン)が合成され、ドーピングで超伝導が確認されるなど、基礎的な物性が確立すると電子移動度が高い半導体として、次世代電子回路材料への展開が現実化した。黒リンは高圧相でこれまでは合成が難しかったが湿式の合成法が見つかったことで、一気に注目が集まった。

 

Credit: Nanomaterials and Energy Devices Laboratory / Vanderbilt

 

この発電デバイスによりバッテリーが不要のウエアラブルデバイスが現実味を帯びてきた。これまで機械的な振動による発電、熱電素子、太陽光、RF、生物化学反応の利用など多くのアプローチが考えられてきたが、服に発電素子が仕込めルコとができれば、人間の運動で意識せずに発電・充電が可能になる。

 

発電に必要な運動の周波数は10Hz以下であるため、ゆっくりした人体の動きでも良い。これまで圧電素子で可能な程周波数限界は100Hzなので、(最高でも5Hz以下の)人体の運動で発電できる。