世界最古の多細胞生物の化石

30.04.2017

Photo: phys.org 

 

南アフリカで発見された化石の真菌が地球上最古のものよりさらに12億年前のものであることがわかり、これまでの進化の説明が書き換えられることとなった。24億年前と推定されるこの真菌は人類の祖先もここから派生した世界最古の多細胞生物となる(Nature Ecology & Evolution 2017)。

 

これまでバクテリア以外の植物、動物、真菌に派生すると考えられてきた真核生物(細胞核を有する生命体)の痕跡を含む化石は19億年前のものが最古であった。この古真菌のような生命体の痕跡は南アフリカの地下800mのか石化した気泡から見つかった。これまで真菌は陸上に現れたと考えられてきたが今回発見されたものは海洋火山の岩石の隙間に隠されていたため発見されなかった。

 

真菌を閉じ込めていた溶岩は24億年前のものであった。この時代は大量の酸素が大気中に生成された22億年前より2億年前であることは興味深い。なぜならこの結果は真菌が酸素の少ない暗黒の環境に生息していたことを示しているからである。地球の歴史は46億年。下図で光合成が始まり酸素が大気中に満ちてからとされてきた時期真核生物の生息時期が光合成と逆転することになる。

 

 

Credit: apbiologyreview2015.weebly.com

 

真菌は植物の一種と分類されてきたが1969年以降は動植物と区別されるようになった。典型的な真菌のイースト、カビ、白カビ類は湿った環境に生息し有機物で生命活動を維持する。真菌は植物と異なり光合成をしないので細胞にはセルロースがない。今回発見された真菌はこれらと異なり、太陽の届かない陸地や海洋の地下生物圏と呼ばれる深部に生息する。つまり太陽光のない地下で生命を維持できる。

 

地下生物圏は地球のバイオマスでの存在比率が大きいがよく知られていない。これまでに報告されている海底溶岩の気泡中の真菌は高々5000万年前のものである。今回発見された24億年前に生息していた真菌は微生物と共生し代謝に蓄えられる化学エネルギーで生命を維持していたと考えられる。そのため酸素を必要としないことと矛盾しない。

 

この研究の結果は真核生物の起源に関するこれまでの考えを覆すものである。