フランスが原発の1/3を停止

11.07.2017

Photo: mintpressnews

 

原子力大国フランスに大きな変革が押し寄せている。2015年に社会党が多数を占める議会は、政府が原発依存率を2025年までに75%から50%に引き下げる法律を可決した。法律の数値目標を達成するため、新政権の環境大臣は2017年10日にフランスの脱原発を図るため最大で原発の1/3を停止する可能性があることを示唆した。

 

熱心な環境保護者で知られる環境大臣のニコラ・フロット氏は、保有する58基中最大17基の原発の停止が必要であるとしている。この決定は年間34億ドル約4,000億円)を原発輸出で稼ぐ原子力大国の将来にも影響が避けられない。

 

落日を迎えるフランスの原子力

フランス(アレヴァ社)は世界の原発市場でも有数の輸出メーカーで原発輸出はフランスの輸出産業の花形であったが、2011年の福島第一の事故は欧州各国が原子炉のリスクを認識するきっかけとなり、いち早くドイツは脱原発路線に転じた。

 

フランスの原発の多くは1970-80年代に建設されたもので、稼働から40年以上の老朽化で、更新の時期が近づいていたが、寿命延長のための安全性の見直しと工事がコストと時間的制約から現実的で亡くなっていた。一方でアレヴァ社が総力をあげて開発した欧州型原子炉(EPR)も新規建設が遅々として進まず、更新の目処も立たない状態であった。

 

脱原発の潮流の背景

福島第一事故は国民の脱原発志向に決定的な影響を与えたことは確かだが、背景には老朽原発の更新が財政的に困難になったという経済的な理由が背景にあった。米国でも原発は同様の危機を迎えており、次世代小型原発への転換も進展が遅く世界市場は経済成長を続けるアジア(中国、インド)とエネルギー不足を抱える発展途上国に限られる(下図)。

 

 

Credit: u3o8corp

 

 

2014年に巨額の赤字で倒産の危機を迎えたアレヴァ社は2015年に提携先の三菱重工から融資を受け、危機を脱したかに見えるものの、EPRが唯一稼働する中国・インド市場頼みの綱渡り経営状態にある。先進国と対照的に見える発展途上国の原発市場にも、寿命(40-50年)という持続性リスクが潜む。