ナノエンジニアリングで燃料電池触媒性能が向上

01.05.2017

Credit:  Nature Comm.

 

(アルコール型燃料電池など)固体電解質型燃料電池では燃料を改質して水素をつくらず、直接反応でアルコールを酸化して水とCO2を生成する。Pt、Pdなどの貴金属はその重要な触媒材料で酸素還元反応を高めるコアシェル型ナノ粒子構造の研究が盛んである。

 

中国の北京大学の研究グループはこのほどPd-Ni-P3元系ナノ粒子がアルコール型燃料電池の酸化反応を促進し、従来のPd/C触媒より効率が約7倍向上することを示した(Nature Comm. 8:14136(2017))。DFT計算によるとメタノール酸化反応ではNiサイトで生成したOHラジカルが、Ni-Pd距離を支配するPd/Ni成分比の最適化で、PdサイトでのCH3Oラジカル生成と組み合わされて反応効率が上がる。

 

 

Ni原子とPd原子が協調してアルコール酸化反応を活性化するPd-Ni-P金属触媒系では、PdとNi原子間距離が小さければ相互作用が大きくなりエタノール酸化反応に有利となる(上図)。北京大の研究グループはPd-Ni比率を変化させたNi-Pd-P複合ナノ粒子を製造して反応効率を調べた。下図のa 、b 、cはそれぞれPd38Ni49P13, 5.5±1.0 nm 、Pd38Ni45P17, 5.3±1.0 nm、Pd40Ni43P17, 5.3±0.5nmのTEM(上段)及びHRTEM(下段)を示す。

 

Credit: Nature Comm.

 

 

研究グループは触媒能力のNi/Pd比依存性はN(Ni)~N(Pd)となるPd40Ni43P17で最大となるとしている。Pd-Ni距離が小さく反応に有利な幾何学的条件とPd、Ni原子から電子をP原子が受け取る役割分担が功を奏した。Pd-Ni-P3元ナノ粒子系ではPd/Ni比を1:1にする組成でOHラジカルとCH3Oラジカルが反応しやすい幾何学的条件を満たす。またこれによりエタノールが酢酸エステルとなる反応が促進され触媒毒(CO)の生成が抑えられる。多元系ナノ粒子の成分比とサイズの最適化で反応効率を向上できる戦略の有効性が確認された。