2050年に98億人になる世界人口

26.06.2017

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世界人口が急激な増加を始めたのは20世紀に入ってからのことだが、成長率でのピークは1970年頃の2.1%で、その後は下降線をたどり2100年には8,300万人増加に相当する0.1%になった。そのため増加は緩やかになり2040年の国連の予測は92億人である(下図)。

 

 

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最新の国連予想では2050年の人口は98億人となる。人口が現在の76億人から22億人増える2050年の国別人口は現在と相当に異なる状況になっている。例えばインドは中国より人口が増え、ナイジェリアが米国より人口が多くなっている。

 

地域依存性が大きい人口増加

地域別にみると最も人口が増加するのはアフリカで2050年までの人口増加の半分以上がこの地域である。一方、欧州の人口は今後減少を続ける。その結果、今後の人口増加の半分以上がインド、ナイジェリア、コンゴ、パキスタン、エチオピア、タンザニア、米国、ウガンダ、インドネシアの9カ国によるものとなる。

 

特にアフリカ26カ国の人口は倍増する。また現在世界人口ランキング7位のナイジェリアは最も人口増加率が高く2050年までに米国の人口を追い抜き、現在の人口14億人の中国は13億人のインドに抜かれる。女性一人当たりの出生率でみると平均が2.5人に対して、欧州は1.6人、アフリカは4.7人と人口増加が出生率に依存することがわかる。

 

人口増加の1/2は発展途上国

発展途上国(47カ国)の人口増加率は2.4%と過去の人口増加率のピークに等しいが、今後減少していくとみられる。このため現在の発展途上国全体の人口が現在の10億人から19億人に増える。一方で46%を占める国の出生率は減少する傾向にある。

 

過去12,000年の世界人口推移をみると20世紀以降の急激な上昇が見て取れる。このパターンが地球温暖化の議論で話題となるJ型のトレンドになるが、実際には増加率は0.1%で最近の増加率は減速している。

 

深刻なのはエネルギー危機

人口とエネルギー摂取と消費量は比例している。現実的な人口増加による課題は食料供給とエネルギー供給となる。食料については人口増加分の29%が不足するが、農業、畜産の効率化と都会のように人口が集中する地域にはバーテイカルファームや海上農業で対応するなど解決できない問題ではない。実際、世界で食べきれずに廃棄されている食料は40%以上ある。食糧危機は深刻な課題とならない。

 

人口増加の最大の課題はエネルギー不足にある。2050年までには世界のエネルギー供給量の種別(エネルギーミックス)にも大きな変化が予想されている。下に示すように先進国(OECD国)と発展途上国(非OECD国)を比較すると、発展途上国のエネルギー需要が先進国を大きく上回って、人口増加と対応している。 

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化石燃料にはCO2排気規制の制約があり、原子力にも安全性と資金面で大きな伸びは期待できない。一方、先進国の再生可能エネルギー増加も減速しつつあり、エネルギー不足は発展途上国の再生可能エネルギーで賄うことが望ましい。人口増加は経済成長を伴うが同時に消費するエネルギーを生み出す努力も必要になる。

 

 

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これからの35年は20世紀以降未体験の人口増加による、エネルギー需給、食料需給、地球環境保全で未知の領域に飛び込むことになる。ちなみに地球平均気温は減速し地球温暖化説が予測する気候変動が深刻になる可能性は低い。ただし大気のCO2濃度は直線的に上昇を続けており、環境汚染(海水の酸性化の問題)による食料問題が顕著になる。