英国に突きつけられた600億ユーロ

03.07.2017

Photo: independent

 

 英国は独占禁止法違反でEUから罰金を科されたグーグル(注1)とは比較にならない巨額(最大600億ユーロ~7.7兆円)の追徴金を突きつけられている。英国はEUの正式脱退以前にこの金額を払わなければならないが、過去40年にわたってEUに多額の負担金を支払ってきた英国は国民の同意を得ることが難しいとして、支払いを拒否する姿勢を見せている。

 

(注1)6月27日、欧州委員会はグーグルに独占禁止法違反で24億ユーロ(日本円で約3,000億円)のの罰金を科した。ユーザーがショッピング検索で検索をしたときに自社が有利なように商品価格検索結果を操作した疑いがあり、過去8年にわたる改善勧告を無視してきたためである。なお24億ユーロは同社の年間売り上げの20%以上に相当する。

 

 ブリュッセルのシンクタンク(Bruegel)の見積もりでは、追加負担金は254~651億ユーロになる。EU脱退派はEUへの英国の負担金で責務を果たしておりEUへの追加負担金の支払い義務がないとしている。3.21億ユーロでブリュッセルに最近建設された欧州理事会新ビルの建設費負担金や欧州投資基金(注2)への英国負担が大きいことや、追徴金にはEU事務局役人の年金が含まれていることも支払い拒否の理由となっている。

 

(注2)1994年にルクセンブルグに設立された金融機関で、出資比率は欧州投資銀行と欧州委員会がそれぞれ60%、30%で残りが民間投資機関による出資。

 

 最新の報告書ではEUの2014~2018年度の予算(債務)は7,240億ユーロとなり、英国の負担が12%とすると869億ユーロに相当する。またEUの資産1,926億ユーロを負担に比例して分割すると英国の取り分は177億ユーロとなる。一方、EUが英国に対して使った予算総額は289億ユーロである。

 

 英国にとっては負担金に対して応分の恩恵がないことはEU脱退に踏み切った理由の一つでもある。EUが突きつけた追加負担金の正当性を巡っては本格化するEU脱離交渉の前哨戦とも言えるが、支払額に関する英国とEUの開きは大きく交渉は前途多難である。