中央銀行による金融資産購入はいつ終わるのか

13.06.2017

Photo: bloomberg.com

 

 世界の中央銀行(スイス国立銀行、イングランド銀行、日本銀国、中国人民銀行、欧州中央銀国、連邦準備銀行)は、今年に入って5月まで間に、総額1兆5000億ドル相当の株、債券そして他の金融資産を購入してきた。株価、債券などの市場でバブルを膨らませ、その結果、資本主義市場ではなく完全に操作された市場となった。

 

 

 2008年の金融危機行以降から始まった量的金融緩和政策で、中央銀行は大量の金融資産を買い続けてきた。実に、2011~2016年の5年間に総額7兆ドルの金融資産を購入、2008年の金融危機前に3兆5000億ドルであったバランスシートは14兆6000億ドルまで膨れ上がったのである。この額は世界のGDPの約38%に匹敵する規模である。

 

 

Credit: Citi Research, Haver

 

 中央銀行による異常とも言える金融資産購入は、今年の1-5月の間で総額1兆5000億ドルに金額にもなる。この勢いでいけば、年間3兆5000億ドルの購入となる。これは2008年の金融危機前のバランスシートと同じだけの額の金融資産を1年で購入したことになる。

 

際限のない中央銀行の金融資産購入

 中央銀行が株価暴落、金融市場の安定化を図るために実施してきた株、債券の買い入れ政策には、いつまで買い続けるかの期限、出口戦略が見えない。日本の場合、日経平均株価を構成する約9割(225銘柄のうち200社)の企業で、日銀は保有率上位10位内で実質的な大株主である。保有率が上位5位内である企業は81社に上る。スイス国立銀行は米国のIT企業の他有力企業の株を保有、そのなかでも保有するフェースブック株はCEOのザッカーバーグのそれを上回る。

 

 1998年に米ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)はアジア通貨危機で大きな損失を出し破綻した。その際、世界の金融機関への連鎖で金融恐慌を阻止する目的で、欧米の大手銀行と証券会社は救済資金を提供し、LTCMは救済された。続いて2008年のリーマン・ブラザーズの破綻で、破綻危機に追い込まれた金融機関を救済したのは連邦準備銀行であった。

 

金融資産の購入が終わる日

 世界の中央銀行の株、債券や他の金融資産の購入で、市場は経済指標や地政学的リスクに変動しなくなり、何が起きても株価は上昇傾向にある程、影響力を持つようになった。では、世界の中央銀行のバランスシートはいつまで拡大を続けられるのか、そして中央銀行が破綻危機を迎えた場合、どのようにして救済するのかは不透明である。