世界はいま危機の季節(冬)にある~フォース・ターニングの警告

30.05.2017

Photo: top10songs

 

 1997年に出版された『フォース・ターニング:米国の予言』(The Fourth Turning: An American Prophecy)によれば、アメリカの歴史(社会的変化)は4つの節目に区切った80年周期で繰り返している。その周期の最後の節目は「冬」の危機の時代で、今アメリカが置かれている現状である。著者ニール・ハウ氏は、現在の社会の傾向や変化は1930年代と類似性が多く、これから世界は「冬」のより危険で深刻な時期に入ると警告する。

 

歴史(社会の変化)の4季節とは

 ハウ氏によれば国家の歴史(盛衰)は80年周期、20年ごとの四季(春夏秋冬)で表現できる。それぞれの季節は至福(High)、覚醒(Awakening)、破壊(Unraveling)、危機(Crisis)の4つのパラダイムに対応する。現在の周期では1946-1964年の「春」(至福)、1964-1984年の「夏」(覚醒)、1984-2008年の「秋」(破壊)、そして2008-2030年の「冬」(危機)のパラダイムシフトを迎えている。

 

 ひとつ前の周期での「危機」は、1929-1945年の世界恐慌から第二次世界大戦までの時代となり、アメリカは既に独立戦争、南北戦争と世界恐慌/第二次世界大戦の3回の転換期(危機)を経験、現時点2008年のサブプライム住宅ローン危機がきっかけとなる第4回目の転換期の最中にあるとしている。これが著書タイトルの「フォース・ターニング」の意味である。

 

Credit: foursignposts

 

フォース・ターニング にある世界

 ハウ氏によると危機を迎えているのは米国だけではない。世界中で、既存の組織、機関、制度(政府、企業、銀行、軍、警察、司法など)への不信感が高まっているだけでなく、メディア、政治家、民主主義に対しても信用が崩れている。社会への不信感や不満は高いが、個人主義思考は強くなる。この社会的変化のなかで、1930年代のように右派ポピュリズムの熱狂が今後も高まり、人々は新しい秩序、新しい価値観を求める姿勢が強くなるとしている。

 

 転換期のフォース・ターニングが前半期の最後に近づくにつれて、深刻な金融危機や戦争が起きる可能性は高まる傾向にある。地域主体、ナショナリズムの高まりで、EUのような地域統合体が破壊、南シナ海、朝鮮半島、バルト三国、中東などの政治的対立がある地域で戦争が勃発する可能性が高まるとされる。アメリカはこれまで80年周期を毎回戦争で終えており、今回も例外はないとしている。

 

危機の季節の後にくるもの

 2020年からの危機の後半期には、対立の終結に向けての交渉、新しい条約の設立、国境の書き換え、そして新しい世界秩序が出来上がるとハウ氏は予測している。2030年代初期には、出生率は上がり始め、経済的均衡は高まり、新たな中間層が生まれ始める。公共投資は新しいインフラ建設で増加、高い経済成長の時期に入る。新しく始まった80年周期は、ミレニアル世代(1980 年代から2000年代前半に生まれた世代)が政治経済体制のリーダー達となり、サイクルは繰り返される。

 

 歴史は繰り返されるというが現在の社会が抱える問題は国内と国家を超えたグローバルな問題が複雑に絡み合い、解決の糸口がみいだせない。しかし歴史と現実は見事にハウ氏の主張する経験則、国家の周期性に一致し、冬の厳しい時期を迎えつつある。人間の2世代にあたる40年を社会の1世代とみれば80年(注1)は2世代分にあたり、それぞれ40年の創生と破壊、正と負の繰り返しは80年周期と矛盾しない。また時代とともに国家の境界が低くなり、この周期性が国家にとどまらず、世界に拡散し地政学的な変動となっていることも理解できる。

 

(注1)80年周期にあるもうひとつの背景は80年がデモグラフのほぼ最大スパンに対応すること。つまり80年経過すれば、権力構造に関与する(一般の人より長寿命の)人間が入れ替わることである。