ハリケーンの災害対策で露呈する危機管理の甘さ

28.08.2017

Photo: nytimes

 

 8月25日夜にカテゴリー4の巨大ハリケーン(ハービー)が上陸して被害を受けたコーパス・クリステイはメキシコ湾に面した港湾都市である。人口約28万人のこの街を襲った巨大ハリケーンは過去にもあった。1919年の巨大ハリケーンの被害は街全体を壊滅させ死者200人、行方不明500人という犠牲者が出た。それから復興を遂げ発展したコーパス・クリステイを再びハーデイが襲った。

 

 その後ハービーは湾岸に停滞しカテゴリー3に弱まりながら北東のコパノ湾から再び上陸した。テキサス州のメキシコ湾岸地域ではハリケーンの被害で211,00戸が停電した。トランプ大統領は災害地域に指定し連邦予算で救助・支援活動が行われる。

 

 

避難指示を巡り知事と市長が対立

 ヒューストンは街の中心が水没するなど深刻な水害を被ったが、ハービー上陸前にテキサス州知事とヒューストン市長は避難を巡って意見が対立した。全米4位、人口230万の大都市ヒューストンとなれば住民の避難も簡単ではない。アボット州知事はハリケーンが巨大でその危険性を察知して警告していたが、ヒューストン市当局は被害が出ている中で待機を指示した。コーパス・クリステイとガルベストンは避難命令を出し、住民に移動するよう説得した。

 

 25日になってアボット州知事はライフラインの寸断に対応するため住民の緊急避難を勧告した。これに対してヒューストン市長は市当局は避難命令を出していないとして真っ向から避難に反対した。現市長のシルベスター・ターナーは黒人のリベラルで、2016年の当選時に「ヒューストンのリベラル維持」を掲げている。

 

 アボット州知事の危機管理対策は徹底している。災害対策をめぐる意見対立は政治的対立が表面化したと言える。トランプ大統領はツィッターでテキサスとルイジアナ州知事に緊急災害対策の用意があることをいち早く伝えた。リベラル市長はしかし州知事に反抗的な態度をとった。

 

 案の定、ヒューストン市内は大洪水で孤立し、トランプ大統領は現地入りしてカトリーナの時に休暇でワシントンを離れていたブッシュ大統領との危機管理能力の差を見せつけた。一方でヒューストン市民に家に留まるように説得したターナー市長の危機管理の甘さが露呈した形となった。カトリーナ対策の遅れで顰蹙を買ったブッシュ大統領と同じようにターナー市長への信頼失墜は避けられない。しかし政治対立で迷惑を受けるのは一般市民である。