破産危機が迫るイリノイ州

04.07.2017

Photo: investmentnews

 

 今では「アメリカのベネスエラ」と呼ばれるようになった米イリノイ州は、財政破綻寸前の状況にある。2010年以降、増加を続けきたイリノイ州政府の未払い残高は現在151億ドル以上にまで膨れ上がり、年金債務は2,510億ドルに昇る。中西部で最大人口の同州が50州で初めて、連邦破産法第9章を宣言する州となるのは時間の問題となった。

 

 イリノイ州の151億ドル以上の未払い残高は州の年間運営予算の約40%に匹敵するが、このままでは、2019年には280億ドルに達すると予想されている。社会福祉施設、医療保険、公務員向け年金積立、州立大学、警察、公共施設、公共交通、公共工事、州の宝くじ当選者などへの支払い資金が不足、未払い残高の増加は膨らむばかりである。

 

悪化する財政状況の原因

2012年に85億ドルであった未払い残高は、2017年6月には151億ドル以上まで膨れ上がった。財政状況をさらに悪化させたのは、共和党の州知事と民主党の勢力が強い議会との「捻れ政治」体制で、議会で州予算が2年連続成立しなかったことである。イリノイ州は上限のない予算が2年続き、7月1日の新年度からは3年目の予算枠が決まっていない州財政運営が始まった。

 

 予算枠がなければ、未払いの支払いや債務の返済への対応と財政緊縮を遂行できない状態が続くことになる。去年の支出は税収より60億ドルを上回っており、増加を続ける151億ドルの未払い請求には8億ドルの未払い金利が加わる。

 

 不透明な状況が続く財政改善を受け, S&Pはイリノイ州の格付けを最低ランクのジャンクに格下げした。資金を借りることができても、デフォルトのリスクが高いため、支払う金利も高くなり、借金はこれまで以上に増えることになる。

 

 この状況に最も被害を受けているのが、医療を受けられない生活が困難な社会福祉助成金や医療保険の受給者たちである。医療保険(Medicaid)受給者たちによるイリノイ州政府への訴訟に発展した。6月30日には、連邦裁判所はイリノイ州に30億ドルの医療保険の未払い請求のうち2018年までに20億ドルの支払いと毎月の医療保険への適切な支払いを命じた。

 

避けられない破綻

 イリノイ州は財源を確保するため、議会は32%の増税、法人税を現在の5.25%から7%に引き上げる緊急対策案を可決した。年間予算の上限を回避し、増税を多数賛成で決めた議会の責任は重い。増税でイリノイ州から他の州に移動する市民や企業が増え、人口と企業・産業は減少したため、さらに税収が減るという悪循環が避けられない事態となった。

 

 中西部最大のイリノイ州はアメリカの製造業・エネルギー産業・商業の中心で州総生産では全米第5位であった。しかしアメリカの製造業の空洞化をもろに受けた結果、現在は疲弊したインフラと高い失業率に喘いでいる。破綻が避けられない州はイリノイ州だけではない。州財政破綻にアメリカの現実がある。

 

 

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