擬似衛星となるエアバスの高高度ドローン

13.08.2018

Photo: airbus

 

スペースX社が先導したロケット再利用技術や小型ロケット開発は衛星の起動投入ミッションの低コスト化の鍵となる。一方で、気球やドローンなどの高空擬似衛星技術でさらなる低コスト化が期待できる。

 

エアバスが開発した高高度ドローン、ゼファーSはこのほど滞空時間の世界記録を達成した。総滞空時間は25日23時間57分間となる。英国で建設されたドローンは、アリゾナ州から離陸し、安全に帰還した。これまでの飛行記録は14日間であった。

 

ゼファーSは成層圏の長時間運用を目的としており、超音速旅客機コンコルド、U2偵察機、マッハ3 SR-71ブラックバードより高い高度を飛行する。このドローンは、従来の衛星の代用としてコストを抑え、柔軟な運用を可能とする。実際には衛星では分類されない高高度航空機であるが、衛星同等の役割を果たすことができるため、衛星と比べても市場競争力がある。

 

エアバス社は、ゼファーSが成層圏を飛行する最初のドローンで、機体に炭素素材を使うため 軽量(75kg)であることが特徴で、25メートルの翼幅を持つグライダーのような機体形状である。西オーストラリア州ウィンダムの拠点が今年後半に開業する予定である。ゼファーSのアプリケーションには、遠隔通信、海上監視、国境巡回、環境変化の測定、森林火災や油流出のモニタリングが含まれる。機体は模型飛行機をスケールアップしたようなもので3名で滑走路なしに離陸できる。ゼファーSのペイロードは5kgだが大型化したゼファーTでは20kgとなる。

 

 

Credit: Airbus

また僻地での安定した携帯電話やインターネットサービスに使うこともできるという。開発にはソーラープレーンの技術を元にしているゼファーSは高高度擬似衛星という新しい航空機と衛星の中間のジャンルを切り開くと期待されている。

欧州は、現在でも対ロシアの国境偵察を重要視しており、国境付近の偵察に特化した擬似衛星をソーラープレーンの延長として開発した経緯は自然な流れなのだろう。