ハーバー・ボッシュ法に依存しない窒素化学の時代

28.05.2018

化石燃料に頼らない世界が近づいている。化石燃料は人類に繁栄をもたらしたが、そのために環境も汚染されて、おそらくは回復不可能であり、代償も大きかったと言える。

 

ユタ州立大学の生化学研究グループによれば、我々の生活に溢れている窒素物質が、非再生可能エネルギーの持続性の鍵を握っているという。米国エネルギー省は、201410月、現在の窒素活性化の分野とその将来の方向性について議論するために、16人の窒素研究の専門家を集めて将来の動向を分析し、報告書をまとめた(Chen et al., Science 360, 1aar6611, 2018)。

 

地球上のすべての生命体は窒素を必要とし、惑星の大気の80%は、窒素で生命維持されている。しかし、動物も植物も窒素を直接摂取しているわけではない。つまり生き残るためには窒素が必要だが、空気中溢れていてもそれを直接取り込むことができない。

 

一世紀前にドイツのハーバーとブッシュは、窒素の強い化学結合を壊し、商業的規模の肥料製造を可能にする画期的なプロセス(ハーバー・ブッシュプロセス)を開発した。これによって食糧供給が可能になり世界人口の前例のない増大に結びついた。

 

これは歴史的な技術の1つだったが、現在は世界の化石燃料供給量の約2%を消費しており、炭素排出量が大きい。そこで窒素プロセスの変換を達成するために、新しい、異なる反応経路をみつける時が来た。この展開は、窒素転換反応の分子レベルの理解だけでなく、新しい触媒システムとそれらの反応を促進するエネルギーの供給手段も必要とする。

 

 

アンモニアを合成する人工光合成プロセスへに期待が集まっている。ナノマテリアルを使って光エネルギーをで窒素固定する方法がみつかれば画期的な展開となると期待されている。