RNAへ適用可能な遺伝子編集ツールCasRx

21.03.2018

Photo: onenewspage

 

遺伝子編集ツールCRISPR/Cas9の進歩に関する論文が急増し、遺伝子操作の完全制御も視野に入ってきた一方で、遺伝子編集箇所の選択精度に問題があるとする懐疑的な報告もある。しかし疾患の根源的な治療法として問題のある遺伝子配列の編集が可能になれば、難病の治療や癌治療へのインパクトが大きい。

 

ソーク研究所(Salk Institute)の研究チームは、DNA出なくRNAを標的とした新しい遺伝子編集ツールCasRxを開発し、痴呆患者に適用して細胞蛋白質の不均衡を正常化することに成功した(Konermann et al., Cell online Mar. 15, 2018)。CasRxはDNA編集の精度を改良するとともにRNAの編集を可能としたことで、遺伝子的な生理機能不全の治療が大きく全身すると期待されている。

 

CRISPRは分子ハサミとして昨日するCas9などの防御酵素を含むバクテリアの免疫システムで、強力な遺伝子編集ツールとして知られる。研究チームはRNAを標的とする新しいCRISPR酵素となるバクテリア遺伝子を探した。正常な生理昨日発言には正しいRNAメッセージが伝達される必要がある。

 

また蛋白質代謝において、転写 (生物学)で合成された一次転写産物からイントロンが除去されエクソンが結合するRNAスプライシングが正常でない場合、脊髄性筋萎縮症、嚢胞性線維症、前頭側頭型認知症を発症する。そのためRNAスプライシングに起因した不良RNAを標的とした薬剤が開発されればこうした疾患を抜本的に治療することができる。

 

Credit: Cell

 

研究チームは特定のDNA配列パターンのCRIPRのバクテリアDNAデータベース検索システムを開発しRNAを標的とするCRISPR酵素ファミリーを発見しCas13dと名付けた。腸内細菌からCasRxと呼ばれるヒト細胞に最適な酵素を得た。認知症の一つである神経変性障害前頭側頭型痴呆のタウ蛋白質を標的としてCasRxをウイルスに仕込み、患者の幹細胞から増殖したニューロンに投入した結果、タウ蛋白質を80%正常に戻すことに成功した。

 

RNAを標的とした他の技術と比較して、CasRxは小さくウイルスに容易に仕込むことができることから、RNAを標的とした遺伝子ツールとして期待されている。

 

 

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