ダークウエブはホワイトナイトになれるか

31.10.2018

Photo: quora

 

 最近の米国内の暴力的な事件の連鎖を受けて、多くの人々が「ダークウェブ」と呼ばれる闇のオンラインコミュニケーション技術に懸念を表明している。オンライン・サービスは、商用インターネットの初期の段階から進化をし続けているが、国民、政府、メディアはダークウエブの脅威を十分に理解していない。

 

 一般のウェブサイト同様、コンテンツ、ソフトウェア、HTML、JavaScriptなどの標準的なウェブ技術で構築されるダークウェブは違法薬物薬を販売したり、盗んだ情報を交換したり、Googleがクロールできないインターネットの闇サイト数は脅威的な速度で増殖している。ダークウエブは犯罪に使われるイメージが先行したため、現代社会の脅威となりつつあるとされる。しかしダークウエブは諸刃の刃であり、ホワイトナイトの素質を有していることはあまり知られていない。

 

ダークウエブとは

 ダークウェブは、FirefoxやChromeのような標準的なウェブブラウザで見ることができる。それらとの違いはウェブサイトとサイト運営者の両方に匿名性を提供するように設計された特別なネットワークルーティングソフトウェアを通じてのみアクセスできることである。

 

 ダークウェブ上のウエブサイトは、 ".com"や ".org"などの一般的なウエブアドレスで終わることはない。文字や数字の長い文字列を含むことが多く、 ".onion"や ".i2p"で終わる。これらによってFreenet、I2P、Torのようなソフトウェアは、ユーザーとホストのIDを非公開にしながらダークウエブを見つけだす。またダークウエブ通信ソフトは世界中のボランティアによって運営されている分散型のリレーネットワークを利用して、ユーザーの通信を守り、インターネット接続の監視ユーザーがIPアドレスやブラウズ情報などの個人情報漏洩を防ぐこともできる。

 

Freenet, Tor, I2Pの出現

 ダークウエブの通信ソフトは新しいものではなく歴史は意外に古い。例えばFreenetは、アイルランドで1999年にインターネットで主流の集中化された構造ではなく、分散型の方法でさまざまな種類のデータを配布するコンピュータのP2Pシステムとして開発された。その構造はファイル作成者のアイデンティティをコンテンツと区別し、匿名のウエブサイトをつくりたい人にとって都合が良かった。Freenetの後も、TorプロジェクトやP2P通信ソフトI2P(Invisible Internet Project)が、匿名でウェブサイトをホスティングする独自の方法を編み出し改良を重ねてきた。

 

 一般的なインターネットには数10億のウエブサイトがあるが、ダークウェブも何万ものサイトがある。上記の3つの匿名システムの中で最も一般的に使用されているものはTor(注1)で、Facebook、The New York Times、The Washington PostのようなウエブサイトがTorのネットワーク上でアクセス可能なウエブサイトのバージョンを持つほどである。これらのサイトはユーザーが個人的かつ安全に接続できるようにするために、Torの匿名化ウエブ技術を利用している。これはダークウエブ通信ソフトがホワイトナイトとして使われていることに他ならない。

 

(注1)Torでは、オンライン匿名を促進し、奨励しているが、ダークウェブだけでなく、通常のウェブサイトも匿名で閲覧できるように設定されているが、Torを使って普通のインターネットにアクセスすることもできる。

 

高まるダークウエブの脅威

 ダークウェブは暗殺者募集、テロリストの宣伝、児童売買と搾取、銃、薬、盗難情報市場に利用されるまさにインターネットの闇の部分である。例えばCraigslistで殺人犯罪者を雇い、Venmoを使って違法薬品を購入することを含め、これらはインターネットを通じて犯罪を行う格好の道具となっていることは否定できない。

 

 検索エンジンは電子メールトラフィック、オンラインゲーム活動、ビデオサービスのストリーミング、企業内で共有されたドキュメント、データなど、通常のインターネットのある部分は見えないが、ダークウエブはDropbox、有料コンテンツの学術論文やニュース記事、インタラクティブなデータベース、ソーシャルメディアサイトの記事などの共有サービスを検索可能なのである。一方、ダークウェブ情報は一般の検索エンジンによって索引付けされない。

 

ホワイトナイトとしてのダークウエブ

 ダークウエブへの恐怖と道徳的主観がオンラインの安全性について誤解を生みやすい。例えば金融サービス会社がダークウェブを監視するサービスを販売し、顧客の個人情報がハッカーによって侵害され、オンラインで販売された場合に警告するとする。しかし、そのサービスにサインアップするには、顧客は社会保障番号や電子メールアドレスなどのあらゆる種類の個人情報を、保護データにする必要がある。安全のために、自縄自縛に陥ることになれば、インターネットの利便性が大幅に失われてしまう。

 

 すべてのオンライン犯罪がダークウェブに基づいていると断定はできないし、ダークウェブウェブを一般の検索エンジンの手が届かないコンテンツと見なすことも正しくない。逆にこれらの誤解に基づいて行動することで、オンライン活動を監視したいと望む政府や企業を奨励し、プライバシー侵害の努力に対して公的支援を与える危険性がある。むしろ政府が安全保障のためと偽って監視社会に突き進むのに対抗するにはダークウエブは頼りになる存在なのかもしれない。インターネットはまさに諸刃の刃であり、闇の部分を活用しなければならないことを念頭におくべきだ。

 

本記事はロバート・ゲール著”Weaving the Dark Web-Legitimacy on Freenet, Tor, and I2P” を基にしたものである。